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拡張現実をさらに拡張する「AAR」 頭上のプロジェクターからARで見えているものを投影Innovative Tech

» 2021年03月12日 13時52分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 カナダ・ウォータールー大学の研究チームが開発した「AAR」(Augmented Augmented Reality)は、AR HMD(拡張現実ヘッドマウントディスプレイ)の装着者が見ている映像を、頭の上に装着したプロジェクターから現実世界にリアルタイム投影するシステムだ。

photo (a)プロトタイプを装着している様子(b)頭上のプロジェクターからの投影画像。右下にはHMD着用者が見ている3Dオブジェクトが表示されている

 ARは、HMDやスマートフォンなどを用い、実世界に付加情報を重ねて表示するものが一般的だが、実世界に裸眼視可能な付加情報をプロジェクタなどで投影する空間拡張現実(Spatial Augmented Reality、SAR)もある。プロジェクションマッピングはその応用例の一つだ。

 AARはこのSARと、AR HMDを組み合わせた2重のARシステムだ。

 プロトタイプはAR HMD(Microsoft HoloLens)をベースに、上下左右の2軸で水平方向240度、垂直方向95度の角度で動くパンチルト機構を頭部に設置。その上に小型レーザープロジェクター(解像度1280×720)を装着した。サーボモーターで駆動し、頭部の動きとは別に、独立した動きでプロジェクタの投影方向を変えられる。

photo プロトタイプの構造
photo AR HMDとプロジェクターの視野角と、パンチルト機構の移動角度

 プロジェクターを固定していないため、頭が頻繁に動いても正確に投影し続けるようにしなければいけない。多視点画像から場面を3次元映像として復元する技術「Structure from Motion」(SfM)により、自動でプロジェクターと周囲の形状を計測して補正する。こうして得られたデータからパンチルト機構を駆動するパラメーターを作成し、適切に動作するよう反映する。

photo AR HMDのバーチャルシーンを壁に投影している様子

 AR HMDで見ている画像だけでなく、別の画像も同時に投影できる。AR映像の共有以外に、インタラクティブな操作も可能だ。

photo 本システムのさまざまな活用事例

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