このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
スイス・チューリッヒ工科大学の研究チームが開発した「Whole-Body MPC and Online Gait Sequence Generation for Wheeled-Legged Robots」は、それぞれの足の先端に車輪を取り付けた4足歩行ロボットだ。障害物がある場所では歩行して移動し、平坦な道では車輪で移動する。
4足歩行ロボットは困難な地形でも歩行できるが、車やバイクなどと比べると直線移動の速度は遅く、エネルギー効率も悪い。今回は歩行と車輪駆動の両方を組み合わせた方式を採用する。歩行モードと車輪モードを切り替えて別々に駆動させるのではなく、人間がローラースケートを履いたまま移動するようなスタイルだ。
研究チームはこの動きを実現するため、その先を予測しながらそれぞれのタイミングで最適化計算を行うフィードバック制御法「モデル予測制御」(Model Predictive Control、MPC)を活用した。ロボットの胴体や足、車輪の連続的な動きを1つのタスクで処理し、リアルタイムの関節速度と地面反力を同時に最適化する。全動作は、単一のパラメーターで設定するため、地形に合わせて適宜対処するような自律性の高い動きが行えるという。
走行実験では、既存の4足歩行ロボット「ANYmal」に車輪を取り付け、草むらや段差がある場所で行った。結果、平らな路面は毎秒最大4mの速度で移動し、急なカーブは足をバタつかせ方向転換、段差では速度を落としまたぐようにクリアするなど、屋内外で良好な成果を得られたという。草むらでの車輪移動中に石につまづいてバランスが崩れた際は、片足だけ上げて調整するなど、適材適所のハイブリッド走行も見せた。
このスタイルでの走行はエネルギー削減にもつながり、これまでよりも長い距離の連続走行を実現したという。
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