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書くときにもフォントにこだわりたい 書いていて気持ちいい、お勧めフォントは?(3/3 ページ)

» 2021年03月19日 10時46分 公開
[西田宗千佳ITmedia]
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「BIZ UD」を選ぶ理由は「多くの環境で使える」から

 ただ、フォントを変える場合、課題が一つある。それは「他人にその文書を渡した際、同じフォントがないと見栄えが変わる」ことだ。

 もちろん、テキストファイルで渡すならフォントの情報は含まれないので問題はないのだが、それではちょっと不便な点もある。Webメディア向けの文章の場合、「太字」「色変え」などの指定を行うこともあるからだ。複数人でチェックする文章の場合、内容校正をする際の履歴管理も必要になる。というわけで、ここ数年は原稿はWordで執筆し、入稿もWord形式で行うことが多い。手法はいろいろあるだろうが、複数の出版社やメディアとのやりとりで技術的な問題がまず発生しないという点を考えると、Word形式が今のところ最適解だと判断している。

 「Wordはいろいろめんどくさい機能が」といわれることが多いが、最初に文字数や設定を自分向けにカスタマイズしたテンプレートを用意しておけば、ほとんど気にする必要はない。そのテンプレ作りがめんどくさいのがWordの最大の問題なのだが。実は、高解像度環境ではどのプラットフォームでも表示が安定して美しいのがWordの利点であったりもする。テンプレート作りの話も、そのうち書くことにしよう。(といっても、もうそうそういじらなくなったが。そのくらい安定運用している)

 閑話休題。

 で、Word形式の場合、フォントを変えると「相手がフォントを持っていないと表示が変わる」という問題が出てくる。

 まあ、フォントがなくても標準のゴシック体で置き換えられるだけで、文書が読めないわけじゃない。筆者の場合には、仮にフォントが置き換えられてもそこまで問題はない。

photo Android版のWordで文書を表示。本当はBIZ UD明朝で書かれたものだが、ゴシック体になっている。そのまま編集してWindowsやMacに戻せば、フォントの情報は変わらず残る。

 なお、フォントが変わったら見栄えの変化が致命的となってしまうような使い方をする場合には、そもそも「双方でのフォントの有無」まで含めて確認をとってデータを渡すべきだ。特にWordなどの場合、そういう使い方をすべきかどうか疑問だ。単に見栄えの点ならば、文書をPDF化して渡せばいい。

 とはいうものの、フォントが変わるとちょっと不安感はある。また、筆者はMac・Windows・iPadを並行して使っている(本当に、どれでも同じように仕事ができるようになっているし、実際どれでも同じようにやっている)ので、本当はどこでも、同じように「気持ちいいフォント」で作業したいものだ。

 BIZ UD明朝を選んだのは、そこにも理由がある。

 BIZ UDフォントは本来ビジネス文書向けに複数のデザインが用意されており、それを有償で購入して使うことを想定したものだ。

 だが、2018年10月に公開されたWindows 10の無料アップデートである「Windows 10 October 2018 Update」以降、Windows 10には「BIZ UDゴシック」と「BIZ UD明朝」が追加で標準搭載されるようになった。おかげでWindows 10のユーザーならば、追加投資なしで誰もが使えるフォントとなっている。

 Macの場合には、モリサワがビジネス向けフォント提供サービス「MORISAWA BIZ+」にて、「BIZ UDゴシック」「BIZ UD明朝」がWindows・Macともに無償公開している。利用にはユーザー登録が必要だが、それ以上の手間はない。Macでもダウンロードして利用すれば、Windows 10と全く同じようにBIZ UDフォントが使えるのだ。文書もテンプレートも問題なく同じものが、同じように見える。

photo モリサワの「MORISAWA BIZ+」。ここから、Windows版/Mac版の「BIZ UDゴシック」「BIZ UD明朝」が無償ダウンロードできる。ただしユーザー登録は必要

  iPadの場合にはBIZ UDフォントを使えない。まあここは妥協するしかない。もしくは、別の方向で妥協し、「游明朝」などのWindows、Mac、iPadの3者に存在するフォントを選ぶかだ。

 個人的には、MicrosoftがiPad版やAndroid版のMicrosoft Officeでも「互換フォント」としてBIZ UDフォントを組み込むようになってほしい……とは思う。

 まあめんどくさい話ばかりなのだが、見やすい、快適な作業環境を作る一助として、フォントについてもちょっと考えてみてほしい。鉛筆やペンを選ぶようなものなのだから。

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