ITmedia NEWS > ネットの話題 >

Clubhouseは日本でどのように広がった? Twitterとの意外な共通点も(2/2 ページ)

» 2021年03月20日 07時00分 公開
[樋口隆充ITmedia]
前のページへ 1|2       

メルカリ出身者や芸能関係者を中心に一気に広がったClubhouse

 日本でここまで急激にユーザーが増えた理由は何だろうか。山田さんによると、20年12月中旬に突然20枠の招待枠が付与されたという。そこで顔なじみだった起業家の内藤聡さんを最初に招待した。家具付きの部屋やホテルの空き部屋を賃貸利用できるオンラインサービス「Anyplace」の創業者だ。「シリコンバレーの著名VCと繋がれるアプリ」という印象が強かったため、内藤さんを含め、シリコンバレーでともに起業している10人ほどに招待枠を配布した。

 だが、それでも招待枠が数枠余り、「資金調達のために日本に一時帰国したタイミングで内藤さんと話し合い、日本の著名な創業者の方々を招待しようということになった」という。

 もともと、メルカリ出身の起業家などを中心にIT感度の高い人には存在が認知され始めていたClubhouse。内藤さんとの話し合いの末、メルカリの山田進太郎社長、CAMPFIREの家入一真CEO、BASEの鶴岡裕太CEOを招待することを決めた。20年12月20日のことだ。

 その後、山田社長経由でメルカリの関係者にClubhouseは広がり、家入さんや鶴岡さんからは芸能関係者にユーザーが広がった。1月中旬ごろからは少しづつ日本語の配信枠も出てきた。中でも鶴岡さんの1月24日のツイートがITの関係者で話題となったといい、「その日の朝から夜にかけて一気に業界に普及した」という。この流れから、「何かサービスを広げるときはこの3人がキーマンだという教訓になった」と山田さんは語る。

ユーザー拡大の傾向にはTwitterとの共通点も

 日米でのユーザー拡大の特徴について山田さんは「米国よりも一般大衆に広がるスピードが速かった印象。米国ではVCやスタートアップ創業者の界隈(かいわい)でとどまっていることがあり、セレブまで広がるのに時間がかかった。また、米国は比較的意識の高いコンテンツが目立っていたように思うが、日本では雑談配信が多い」と指摘。ユーザーが拡大した要因については「日本は業界同士(特にITと芸能)のつながりが深く、iOSユーザーが多いからではないか」と分析する。

 シリコンバレーで数々のサービスを見てきた山田さん。ユーザーの拡大にTwitterとのある共通点を見出しているという。それは上の世代から下の世代への広がりだ。Twitterは06年にサービスを開始し、ビジネスマンを中心にユーザーが増加した。Clubhouseもビジネスマンを中心に「大人のアプリ」として普及しつつあるとし、「こうした動きは珍しい」と語る。

 さらに、Twitterの創業者のエヴァン・ウィリアムズ氏は34歳、Clubhouseの共同創業者のポール・デイビソン氏は40歳の時にそれぞれサービスを開始し、どちらも起業家としては遅咲きの部類に入る共通点もあるという。

photo Clubhouse創業者のポール・デイビソン氏(出典:公式Twitterアカウント)

 これに対し、Facebookはマーク・ザッカーバーグCEOが米ハーバード大学在学中に学生向けサービスとして立ち上げ、その後、ビジネス層に広がったことからClubhouseとは異なる広がりを見せている。

同時接続に技術的な強み、課題はビジネスモデルの構築か

 自身もエンジニアとしてWeb会議システムを手掛ける山田さん。技術者視点でClubhouseの強みをどう見ているのだろうか。これについて、山田さんは同時接続できる点を挙げ「通常、これだけの人が同時接続するとサーバが落ちるのが一般的だが、意外と安定しており、サーバが強い印象。技術レベルは相当高いのではないか」とした。

 誰もが簡単に配信枠を設け、好きなトークテーマで同じ趣味趣向を持つ人同士が交流できる気軽さが人気となっているClubhouse。山田さんは「会いたい人に会え、自分の趣味趣向にあった人に会えるという場所という意味では最適な場所だが、のめり込みすぎると、生産性が下がる。緩くやることが重要ではないか」との見解を示す。

 Clubhouseのテストユーザーとしてアプリの初期段階からサービスの広がりを見てきた山田さんはビジネスモデルの構築が今後の課題とみているようだ。「YouTubeのような収益モデルがなければ、持続的な成長は見込めないのではないか」

 コロナ禍でリモートワークが本格化し、リアルで行われてきたことがオンラインで行われるようになった。山田さんは「ClubhouseやRemotehourが挑戦しているのは、通話そのものよりも、通話が繋がり始める過程のところにある。まだまだ、繋がり方の再定義はされていくと思う」と今後の展望を話した。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.