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レゴがコロナ禍で2桁成長できたワケ キーワードは「マリオ」と「大人レゴ」

» 2021年04月19日 07時00分 公開
[樋口隆充ITmedia]

 「コロナ禍で全世界が大変な状況の中、当初の計画を上回る成長を遂げることができた。要因の一つがレゴ スーパーマリオの世界的な成功だ」――レゴジャパンが開いたメディアブリーフィングで同社の長谷川敦社長はこう語った。

photo レゴ スーパーマリオについて語る長谷川敦社長

 デンマークの玩具大手「レゴ」がこのほど発表した決算では、2020年の世界全体での売上が437億デンマーククローネ(約7600億円)となり、対前年比で13%増加した。具体的数値は開示していないものの、「レゴジャパンも2桁成長を遂げた」(長谷川社長)という。そうした成長をけん引したのが、世界的な人気を誇るゲームキャラクター「マリオ」とのコラボ商品だというのだ。

photo レゴジャパンのオフィス

リアル版スーパーマリオブラザーズ

 レゴ スーパーマリオは、レゴの新たな商品シリーズとして2020年7月に発売。現在(2021年4月19日時点)25種類の商品がある。従来のレゴシリーズとは異なり、バーコードリーダーやジャイロスコープ、液晶パネルを搭載した特注フィギュアの採用、専用アプリとの連動などデジタル要素を盛り込んだ点が人気の理由だ。

 遊び方はシンプル。“本家”「スーパーマリオブラザーズ」のようにスタートからゴールまでに要した時間や制限時間内に集めたコインの数などを競う。コースは自分でカスタマイズでき、「スーパーマリオメーカー」のような遊び方も可能。

 甲羅やブロックなどに貼ったバーコードをフィギュアで読み込むと、キノコなどのアイテムやコインが手に入り、それに応じてマリオの表情も変化。バーコードリーダーは色別に識別し、例えば赤色なら炎、紫なら毒と認識し、それに応じた効果音も流れる。フィギュアと専用アプリ「LEGO Super Mario」(iOS/Android、無料)をBluetooth接続することで、プレイ結果や自らが作成したオリジナルコースをシェアできる他、アプリのアップデートでフィギュア側の機能も追加される。

photo 専用アプリと連動する

 現時点でルイージは商品化できていないものの、別売りのパーツでネコマリオやタヌキマリオ、ペンギンマリオに着せ替え可能だ。

photo 別売りパーツで着せ替え可能(レゴ公式ページ)

レゴ側がオファーし、実現した異色コラボ

 「当初計画の2倍くらいの売上を上げている」(長谷川社長)というレゴ スーパーマリオ。レゴと任天堂という異色のコラボはどのようにして実現したのだろうか。

 レゴには各世代の好きな興味分野をリサーチし、その結果を基に商品化する文化がある。子どもを対象にリサーチした結果、人気のある分野がゲームと判明。ゲーム分野で老若男女問わず世界的なキャラクターを再度調査したところ、任天堂のマリオが候補に挙がったという。

 そこでデンマークのレゴ本社が任天堂本社に話を持ち掛け、コラボが実現した。スーパーマリオブラザーズシリーズの制作を手掛けた執行役員兼プロデューサー(上席統括)の手塚卓志さんらとレゴ本社のデザイナーが共同開発し、約5年の歳月を経て商品化にこぎつけた。

 レゴジャパンでレゴ スーパーマリオシリーズのマーケティングを担当する橋本優一シニアマーケティングマネジャーによると「レゴがどこかの企業とコラボするケースはこれまでもあったが、通常は監修程度。今回のように企画段階から連携する共同開発はかなり珍しい」と話す。

 「任天堂とレゴという異なる分野のプロフェッショナル同士のDNAを組み合わせた商品。レゴとしても最新技術を詰め込むことができて誇らしい」と橋本さん。任天堂側からも好反応を得ているという。

 レゴジャパンによると、日本は一人当たりの玩具への支出額が世界トップクラス。このため、レゴは日本市場を「戦略的に重要なマーケット」と位置付けている。また、ユーザーがレゴ側に商品化をリクエストし、1万人以上の賛同を得ることで商品化される「レゴアイデア」が日本発の仕組みであることから、レゴは日本を「イノベーションの発信地」としている。レゴの気合の入れ様にはこうした背景もあった。

 当初は子ども向け商品として企画されたが、発売するやデジタルと組み合わせた仕掛けが大人にも好評となり、レゴジャパンの主力商品に成長した。「世界的に見ても、日本での販売数は突出している」(長谷川社長)といい「レゴジャパンとしても誇りに思っているイノベーションだ」(同)と話す。

photo レゴ スーパーマリオ

大人向け商品を倍増、イメージ打破を図る理由

 コロナ禍ではマリオシリーズに限らず、他の大人向け製品も大きな成長を遂げた。レゴは近年、大人向けの商品を「大人レゴ」として次々に商品化している。商品化した例としてはフェラーリなどの高級車からスペースシャトル、盆栽まで多岐にわたる。2021年は対前年比で倍増となる120の商品を商品化する予定だ。大人を意識し、商品パッケージも黒を基調としたシンプルでスタイリッシュなデザインにしている。

photo フェラーリ

 これまでも大人向けの商品は存在したものの、タージマハルなどの世界遺産を再現した「レゴクリエイターシリーズ」のように組み立ての難易度が高く、時間もかかる商品が大半だった。難易度を下げ、生け花のシリーズなどのように気軽に組み立てられる商品も積極的に投入し、新たな大人ファンの創出を狙う。グランドピアノのようにインテリアとしても楽しめる商品も用意している。

photo 「フラワーブーケ」(出典:レゴ公式ページ)
photo グランドピアノはインテリアにもなる

 長谷川社長は「子どもにとって一番のインフルエンサーは両親。レゴ好きの親を持てば子どもも自然とレゴ好きになる」と大人向けの商品を拡充する理由を明かし、「大人レゴは戦略的に重要度を増しており、製品数、投資額ともに大幅に増やしている」と話す。日本など先進国を中心に少子化が進む中、購買力がある大人に購入してもらうことで、家族全体でレゴファンになってもらおうという作戦だ。コロナ禍で自宅で過ごす時間が増え、新たな趣味を探す大人が多いというリサーチ結果が出たことも理由の一つだという。

 今後も、企業とのコラボ商品を増やし、商品ラインアップを増やす方針。長谷川社長は「コロナで遊びの重要性が変化した。レゴは子どものブランドだが、大人の中にも子どもの心があると思うので、是非レゴで遊んでほしい」とし、「大人が見てかっこいいというモデルを出し、新規のレゴファンを開拓していきたい」としている。

photo レゴジャパンのオフィス

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