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使い捨てマスクで“呼吸”入力、スマートフォン触らず操作 NTT「IBUKI」開発Innovative Tech

» 2021年04月14日 13時33分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 NTTサービスエボリューション研究所の研究チームが開発した「IBUKI」は、使い捨てマスクに取り付けたセンサーで呼吸を検出し、スマートフォンなどのモバイル機器へのジェスチャー入力を可能にするシステムだ。息を吸う/吐くパターンと呼吸の移動軌跡を組み合わせて多様な入力が行える。

photo 呼吸検出装置をマスクに装着した様子

 今回の手法は、呼吸によるジェスチャーをマスクに装着したセンサーで検出することで、モバイル機器へ直接触れずに操作できるようにする。

 呼吸からジェスチャーを検出する装置は小型で軽く、市販の使い捨てマスクにも組み込める。息を真っすぐ1回吐く、真っすぐ2回吐く、2回吸って1回吐く、吐きながら上を向く、吐きながら右から左に頭部を動かす、吐きながら円を描くように頭部を動かすなどのジェスチャーを、BluetoothまたはUSB接続したPCで推定する。

photo ジェスチャー入力の事例
photo (a) 呼吸検出装置を装着したマスク(b)マスクに取り付けた空気弁が呼吸に伴って移動する仕組み

 マスクに取り付けたバルブ内の空気弁が着用者の呼吸に伴って移動し、その移動量をフォトリフレクターで計測。これにより着用者が息を吸っているか吐いているか、その長さ、速度、強度、単位時間当たりの回数などの呼吸動作を検出する。IMU(慣性計測装置)で頭部の姿勢を検出し、頭部の方向を呼吸の方向と仮定して呼吸軌跡も推定する。ある被験者の認識精度は96.7%を示した。

 この方法なら、つり革などの公共の設備に触れた手でスマートフォンやイヤフォンに直接触れる必要がなくなるため、感染症拡大防止の観点での活用や、手術中、料理中、運転中といった両手がふさがっている状態での活用が考えられるという。

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