ネットワークの規模だけでなく、利用する通信規格にも違いがある。MAMORIOやTileはBluetooth通信のみだが、AirTagはUWB(Ultra Wideband)という超広帯域通信にも対応する。
UWBは到達距離が100から200m、誤差数十cmという正確な屋内測位を可能とする技術だ。Bluetoothより長い距離で通信でき、通信先との位置関係も把握しやすい。
AirTagはこの技術を活用し、落とし物がある距離だけでなく、方向も示すことができる。これにより「近くにあるのは分かるが、どこにあるかは分からない」といった事態を防ぐことが可能だ。
この機能は、UWBに対応したチップを持つiPhone 11や12などで利用できる。逆に言えば、iPhone 11から搭載していたUWBがようやく日の目を見たということでもある。
とはいえTileやMAMORIOも、近くにある落とし物を探せる機能を搭載していないわけではない。例えばMAMORIOのアプリは、タグが発信する電波をARで表示し、可視化する機能を備えている。これを使えば、スマホカメラで周囲を映しながら歩き回ることで、タグの位置を把握できる。
Tileはタグから音を出すことで落とし物を探せる機能を備えている。ただしこの機能はAirTagも搭載している。
違いはタグの価格やバリエーションにもある。AirTagの価格は1つで3800円(税込、以下同)、4つセットで1万2800円だ。バリエーションとしては、エルメスの刻印が入ったタグとホルダーがセットになったモデル(5万3800円)などがある。アクセサリーとして、専用のキーリングやストラップ付きホルダーも用意している。
MAMORIOは基本モデルが2728円。他にもシール型の「MAMORIO FUDA」、布にボタンのように縫い付けられる「Me-MAMORIO」など5モデルを用意している。最も高いのは、カード型の「MAMORIO CARD」(6578円)だ。
Tileは基本モデルの希望小売価格が2480円。接続距離の長い「Pro」や電池寿命の長い「Slim」など4モデルを提供している。最も高いのは、シール型の「Sticker」(2個セットで5390円)。
紛失防止タグのマーケットに、これまでにない巨大なネットワークを引っ提げてやってきたAirTag。MAMORIOやTileといった企業は今後、ネットワークを拡大したり、AirTagにない特徴を強化したりといった努力が必要になるだろう。
とはいえ、MAMORIOやTileには独自の強みもある。例えば、両社は駅などの公共機関の忘れ物センターにアクセスポイントを設置し、落とし物が届いたときに通知するサービスを提供している。仮にAirTagに立ち向かうなら、こういった特徴をどうアピールしていくかが鍵になるのではないか。
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