米国で大きな影響力を持つと言われる非営利の消費者団体が発行する情報誌「Consumer Reports」(以下「CR」)は4月22日(現地時間)、米Teslaの電気自動車「Model Y」による実験で、運転席に誰も座っていなくても自動走行できてしまうことを確認したと発表した。この実験は、17日にテキサス州で起きた「Model S」の衝突炎上事故を受けて実施した。
テキサス州の事故について地元警察は、運転席には誰も乗っておらず、助手席と後部座席に乗っていた2人が死亡したと報告した。自動運転が作動していたかどうかは不明で、現在当局が調査中だ。
CRの実験では、まず1人が後部座席に、もう1人はシートベルトを締めた状態の運転席に座ってマニュアルで発車してから自動運転を作動させた。そのままスピードダイヤルを0に設定して車を停止させてからハンドルに重り代わりのチェーンを引っ掛け、助手席に横移動した(ドアを開けるとオートパイロットが解除される)。助手席からダッシュボードに手を伸ばして操作することで、車両を発車、加速させることに成功した。安全のために時速48キロ程度の速度で、800メートルだけ走行した。
実験を行ったCRの自動車テスト担当シニアディレクター、ジェイク・フィッシャー氏は「Teslaは、ドライバーが走行中に道路を見ているかどうかを確認する技術でGMやFordなどに後れを取っている」と語った。同氏は「(Model Yの)安全装置を無効にするのがいかに簡単かが確認できてしまい、少し恐怖を感じる。安全装置が不十分なことが証明された」とも語った。
Tesla車のドライバーが運転席にいるかどうか判断する方法は、ハンドルに重量がかかっているかどうかのみだとCRは説明した。一方、BMW、Ford、GM、スバルなどの車両には、ドライバーの目の動きや頭の位置をトラッキングし、ドライバーが道路を見ていることを確認するカメラによるシステムが搭載されている。これらのシステムではドライバーが道路を見ていないと繰り返し警告し、無視すると減速し、停止する。
CRは、せめてシートの重量センサーで運転席が空だと感知したら自動運転を停止するようにプログラムすることは難しくないはずだとしている。
CRは、この実験を専用コースで、安全クルーを待機させた上で実施した。フィッシャー氏は「一般道路で運転席無人状態で自動運転をすることは、自分だけでなく他人も危険にさらす」と警告した。
この実験は、テキサス州での事故について具体的な洞察を提供するものではないが、ドライバーが危険な方法でシステムを使えないように、監視システムを改善する必要があることを示すとCRは主張した。
実験の動画はこちらで視聴できる。
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