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» 2021年04月23日 18時00分 公開

“光イジング計算機”で人工の神経ネットワークを作成、神経の性質を再現 NTTと東大

日本電信電話(NTT)と東京大学は、光パルスでできた人工的な神経細胞240個からなるネットワークの作成に成功したと発表した。本来の神経細胞や神経ネットワークが持つ性質の一部を再現できたという。

[井上輝一,ITmedia]

 日本電信電話(NTT)と東京大学は4月23日、光パルスを使って組合せ最適化問題を解く計算機「コヒーレントイジングマシン」を応用して、光パルスでできた人工的な神経細胞「DOPOニューロン」(以下、光ニューロン)240個からなるネットワークの作成に成功したと発表した。本来の神経細胞や神経ネットワークが持つ性質の一部を再現できたという。

DOPOニューロン(光ニューロン)の概念図(プレスリリースより)

 生物の脳内では、神経細胞内の電位が急激に変化する「発火」の信号が細胞から細胞へ伝わることで情報処理が行われている。この発火は2種類のモードに分けられることが先行研究で分かっている他、脳内では神経細胞の集団が一斉に発火する「同期現象」が見られることも知られている。

光パルスの強弱によって2つの発火モードを観測

 東京大学の合原一幸特別教授が率いる研究チームは、光パルスを2つ使って1つの光ニューロンを作成。光ニューロンは光ファイバーを通り、「位相感応増幅器」という機材を通る。位相感応増幅器には入力される光の強度によって出力する光の周波数などを変える性質があり、実験では光パルスが弱い場合と強い場合でそれぞれ異なる発火モードの特徴を再現したという。

 さらに、コヒーレントイジングマシンを応用した装置の中で光ニューロンのネットワークを構築。その結果、結合した光ニューロン間で同期が起こり、各ニューロンの発火モードが自動的に変化する現象が見られた。

実験に使ったシステム。組合せ最適化問題に特化した計算機「コヒーレントイジングマシン」を応用したもの

 チームは研究成果について「発火モードを自在に制御できる集団として、さらに効率のいい脳型情報処理への応用が期待できる」としている。

 光ニューロンのネットワーク構築に使われたコヒーレントイジングマシンは、内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の「量子人工脳」プロジェクトで研究開発されたもの。2017年には「量子ニューラルネットワーク」という名前でシステムをクラウドへ一般公開した。

 「ゲート型」「アニーリング型」に続く「ニューラルネットワーク型」の量子コンピュータであると発表したことから「国産量子コンピュータ」として一時話題になったが、量子コンピュータの定義に合うのか、量子の性質で計算を高速化できているのかなど、研究者から疑問の声も上がっていた。

「量子ニューラルネットワーク」(コヒーレントイジングマシン)の説明(2017年当時の図)

 ImPACTは5年間の事業期間を満了し、2019年3月に終了している。

 本研究の成果は、4月23日付で科学論文誌「Nature Communications」に掲載された。

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