ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

欧州委員会、Appleに「App Storeで支配的な立場を乱用している」と予備的見解を通知

» 2021年05月01日 07時47分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 欧州連合(EU)の欧州委員会は4月30日(現地時間)、米Appleに対し、App Storeを介した音楽ストリーミングアプリの配信で支配的な立場を乱用し、音楽ストリーミング市場での競争を歪めたとの予備的見解を示す異議申立書を送ったと発表した。

 欧州委員会は、2019年にスウェーデンSpotifyがAppleによる競合ストリーミングサービスの締め出し行為を調査するよう申し立てたことを受け、昨年6月にApp Storeに関する独禁法調査を開始している。

 Spotifyの申し立ては、AppleがApp Storeで、自社の音楽ストリーミングサービス「Apple Music」と競合するアプリに不利になるようなガイドラインの変更や30%の手数料の義務付けなどにより、健全な競争を阻害しているというものだ。

 欧州委員会による今回の異議申し立ては、この独禁法調査のプロセスの一部であり、調査は続く。Appleは、向こう12週間以内に書面または口頭審理のいずれかで委員会の懸念に回答する必要がある。

 EUは、「AppleのApp Storeを介してアプリを配布するために、音楽ストリーミングアプリ開発者に課せられたApple独自のアプリ内購入メカニズムの強制的な使用」に問題があるとしている。委員会はいわゆるアップル税が結果的にアプリの価格を引き上げにつながっていると指摘した。また、アプリ開発者がアプリ内で、他の購入選択肢をユーザーに通知することを禁止するルールにも懸念を示した。

 欧州委員会のコミッショナー、マルグレッタ・ヴェスタヤー氏は「App StoreはiPhoneとiPadのユーザーにアクセスするためのゲートキーパーであるため、App Storeの規則はアプリ開発者にとっての懸念事項だ。App Storeへのアクセス条件がアプリ開発者の成功の鍵であり、この重要な市場支配力をチェックする必要がある」と語った。

 eu 「Appleは競争を歪めている」と語るマルグレッタ・ヴェスタヤー氏

 Appleは、英BBCなどに次のような声明文を送った。「このケースのポイントは、SpotifyがiOSアプリで代替サービスを宣伝できるようにしろと要求していることだ。そんなことは世界のどんな店舗でも許可されていない。彼らはApp Storeのすべてのメリットを無償で享受できると考えている。委員会がSpotifyのために主張するのは、公正な競争の対極だ」

 AppleがEUの規則に違反したと決まれば、年間収益の最大10%の罰金が科される。また、ビジネスモデルの変更を余儀なくされる可能性もある。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.