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» 2021年05月14日 16時05分 公開

“アクキーの出し汁”に着想 FeliCa内蔵「推し払いキーホルダー」開発秘話(1/2 ページ)

「好きなキャラのキーホルダーで電子マネーを決済できる」──ソニーが4月に発表した「推し払いキーホルダー」が注目を集めている。商品化に至った経緯やネーミングの由来などを、開発のキーマンたちに聞いた。

[吉川大貴,ITmedia]

 「好きなキャラのキーホルダーで電子マネー決済できる」──“オタク”にとっての夢を実現した商品をソニーが4月に発表し、注目を集めている。商品名は「推し払いキーホルダー」。FeliCaを内蔵したアクリルキーホルダー(アクキー)で、アニメのキャラクターなどをデジタル印刷しており、電子マネー「楽天Edy」の支払いに利用できる。

photo 推し払いキーホルダー

 まずは第1弾として、5月1日から30日にかけてアニメ「魔法少女まどか☆マギカ」のキーホルダー2種を試験販売している。Twitter上では、好きなキャラのキーホルダーで電子マネーを支払える点や、「推し」と「お支払い」を掛けたネーミングなどが発表直後から話題になった。

 推し払いキーホルダーはどのような経緯で発案され、そしてどのような発想で「推し払い」というネーミングに決まったのか。発案者の中野晶(あき)さん(FeliCa事業部 カード設計課)と、命名に携わった小野隆彦さん(同事業部 商品戦略課)に聞くと、ネーミングについては「推しのアクキーから出る“出し汁”」という発想がきっかけになったという。

アクキー好きの社員が奔走 ソニーのテレビ・携帯技術を活用

photo 中野晶さん

 「もともとアクキーが好きで、自分で買ったり作ったりしていた。一方で、アクキーに対して『持っているだけだと実用性がなくてもったいない』とも思っていた。そこで3年ほど前に、ソニーグループ内の展示会で推し払いキーホルダーの試作品を披露したところ、当時グループ内でFeliCa事業を担当していたソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの河野弘副社長(現在はソニーの常務)に声をかけてもらい、商品化できることになった」

 中野さんは推し払いキーホルダーの開発のきっかけについてこう話す。しかし実際の商品化に当たっては、製造過程などにいくつかの課題があり、商品化までに時間がかかったという。その1つがキーホルダーの製造時、アクリル同士を接着する工程で気泡が入ってしまう問題だ。

 キーホルダーに電子マネーの支払い機能を付与する場合、通常は金型や完成品の形状ごとに通信性能の検証が必要になる。一方、推し払いキーホルダーは本体を多層構造で成形し、内部にFeliCaモジュールを埋め込むことで、一定のサイズであればさまざまな形状で必要な通信性能が維持できるようにしている。しかし、この構造に気泡が入ってしまう原因があった。

photo 推し払いキーホルダーの構造

 「そもそも通常のアクリルキーホルダーは1枚板で製造する。しかし多層構造にしようと思うと、素材を貼り合わせる必要があり、気泡が入りやすい。最初はソニーの研究開発部門に協力を要請し、テレビ用のパネルを貼り合わせる装置を使って接着していた。この方法では気泡を入れずに重ね合わせられたが、生産の効率があまり良くなかった」(中野さん)

 その後もさまざまな方法を試したが、中野さんが望むクオリティーと生産効率が両立できる方法は見つからなかった。そこで、携帯電話の画面に使うパネルを貼り合わせる技術を試したところ、気泡の入らないキーホルダーを効率的に生産できたという。

 「ソニーグループには以前、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズという携帯事業を手掛ける子会社があった。現在は事業再編でソニーに吸収されているが、この会社のノウハウが残っており、推し払いキーホルダーの開発に役立った」(中野さん)

 もう1つの課題は、推し払いキーホルダーを開発するに当たり、直属の上長からの理解を得ることだった。中野さんによれば、展示会で副社長から協力を得られたものの、商品化に向けては直属の上長にも製品のコンセプトやターゲットを理解してもらう必要があったという。しかし、中野さんの当時の上長は、アニメやアクキー好きへの理解が深くなかった。

 そこで中野さんは、上長を映画館に連れていき、「Fate/stay night [Heaven's Feel]I.presage flower」などの映画を一緒に鑑賞。その後、感想などを語り合うことで、商品のコンセプトや想定される市場の規模を共有したという。

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