Internetが広く使われる以前の時代の話なので、初期の情報は不明なのだが、1999年1月時点のIALのWebページを見てみると、さらに多くのTechnologyやらInitiativeやらが並んでいたりする。
前回の最後で触れたPnPについても、Intelは比較的早い段階に、IAL内部でPlug-and-Play InitiativeのProjectを立ち上げており、これにMicrosoftが乗った形といっても間違いではないと思う。
もっと正確に表現するならば、MicrosoftはWindows 95を見据えてPnPのインプリメントをいろいろと行っており、一方Intelは独自にPnPのインプリメントを行っており、両社がこれに関して共同で取り組みを行い、Initiative(イニシアティブ)という形で業界に仕様を示すことで対応を促そう、という試みだったわけだ。
実はちょうど同じ1991年、MicrosoftもMSR(Microsoft Research)を立ち上げている。これは当時ネイサン・ミアボルド氏がビル・ゲイツ会長(当時)らに送った21ページのメモがきっかけである。
MSRはどちらかといえばScience方向の研究を主眼とする組織ではあったが、やはり「将来のPCに必要とされる技術を開発して、それを製品開発部門に渡す」という意味ではIALと近い動き方をしていた。
実際この後、IntelとMicrosoftはさまざまなシーンで協業する形で新しい規格やInitiativeを提供していくが、それは両者の背後にIALやMSRという、将来に向けた技術開発を行う組織があったから可能になった、という部分が大きい。
もっともこう書くとまるで両社が蜜月関係にあったかのように見えるが、実際はいくつかの点で激しく争っていた。有名なところでは、1994年に大激論となったNSP(Native Signal Processing)がある。基本的なアイデアは「CPUでモデムとかサウンドなどの処理を行うために、DSP風の処理に便利な拡張機能を搭載する」というもので、最終的にこれはMMXとして1997年に発表された。1994年11月に発表されたNSPも、基本的なアイデアは全く同一である。
では何が違うかというと、当時IntelとしてはOS非依存な形でNSPを利用できるようにしたいと考え(これはCPUメーカーとしては当然である)、そこでNSP用のデバイスドライバをRing 0(一番特権の高い動作モード。別名カーネルモード)で動作するVxDの形で提供予定だった。ところがMicrosoftはデバイスドライバの形式をVxDからWDMに移行しようとしている最中で、今さらVxDで提供されるのは許容できなかった。
さらに許容できなかったのは、IntelはこのVxDをSPOSというRTOSベースで開発しようとしていたことだ。SPOSというRTOSは既に存在しない(開発元がTIに買収され、現在はTI-RTOSとして提供されている)が、当時多くのDSPがこのSPOSを利用しており、それもあってIntelもSPOSを使ってNSPのサポートを行う予定だった。
つまり、これをサポートするとWindowsの中でSPOSが(しかもRing 0で)稼働するという、Microsoftとしては絶対に許容不可能な設計になっていたのである。
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