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シェアリングで乗れる三輪スクーターのUIとデザイン EVではない“現実解”デジタルネイティブのためのUIとデザイン(モビリティ編)(4/4 ページ)

» 2021年05月31日 21時48分 公開
[菊池美範ITmedia]
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 筆者は二輪に関しては原付から大型二輪まで経験あるが、ジャイロキャノピーに乗るのは初めてだった。

 直線を走る分には問題はないのものの、交差点やカーブでの挙動は独特の動きをする。慣れないうちは慎重にライディングする必要がある。とくにキャノピーの屋根は背が高いので、交差点で車体を傾けるときはガードレールや歩行者に注意しよう。

 ジャイロに詳しい友人S氏のコメントによると、車体を傾ける方向に後輪の舵角が入る(後輪も倒した方向に少し向く)らしい。この機構がカーブや交差点での扱いやすさにつながっているようだ。

 ただし車両区分は原付一種。公道制限時速30kmと交差点での右折に制限がある。思ったよりもよく回るエンジンなので、つい制限速度をオーバーということになりかねない。キャノピー付きの快適さに原付一種であることを忘れ、うっかり右折レーンに入ってしまわないよう気を付けたい。

 日常での買い物に何度か使用したが、荷物を積んだときの安定性は良い。耐候性と被視認性がオートバイや二輪のスクーターよりも高いので、通勤や買い物の便利なモビリティとして汎用性が優れている。

 この辺りは事務機器のメンテナンス車両やキャンプ、釣りなどのアウトドアで愛用されたり、ユーザー改造によるミニカー登録、排気量アップによる原付二種以上への変更など、30年にわたって熟成されてきた所以(ゆえん)だろう。

まとめ

 「モビリティの分野では実証実験が終わっても、効果的な形での社会実装がされている実感がない」という意見を耳にする。確かに一理ある言葉として筆者も受け止めているが、法規制や関係各省庁の合意の複雑さを考えると、日本では実証実験がそのまま実装されることの方が稀(まれ)であると思っている(良いこととは思わないが)。

 横浜で6年前に実施されていた「チョイモビ」というプロジェクトは現在終了しており、この実験で見られた小型EVも、現在は借りて乗ることはできない。

photo 横浜の街を走っていた、ルノーのデザインによるコンパクトでスタイリッシュなEV

 時代の状況が大きく変わってしまったこともある。2014〜2016年当時は2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、観光需要でのスポット間移動を補完するシティーコミューターとしての役割を期待されていた。だが2021年5月現在、国内外からの観光客はコロナ禍で期待できない状況にある。

 そんな中にあっても、OpenStreet、ENEOSホールディングス、さいたま市の共同事業はユーザーにいち早くこのサービス体験してもらうことを重要視しているのではないか。

 今ある技術やインフラをスピーディーに投入して、並行して新技術やデザイン、UIを洗練させていくことが、最適解でなくてもそれに近い現実解を実装して、運用してアップデートする……。そんなプロジェクトであることを期待しつつ、これからもこの実証実験に参加し続けるつもりだ。

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