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「IGZO」で3次元集積メモリを開発 機械学習の高効率化に期待

» 2021年06月04日 21時39分 公開
[林佑樹ITmedia]

 東京大学生産技術研究所は6月1日、スズを添加した「IGZO」材料を使ったメモリデバイスの開発に成功したと発表した。3次元に集積できるため大容量メモリが作製可能で、プロセッサの集積回路の配線層に直接実装できることから、プロセッサとメモリ間のデータ伝送効率も向上できるという。

東京大学生産技術研究所が開発した、IGZO材料の3次元集積メモリの概要

 IGZOはIn(インジウム)-Ga(ガリウム)-Zn(亜鉛)-O(酸素)の4元素からなる酸化物半導のこと。シャープの「IGZO液晶ディスプレイ」など、ディスプレイの駆動トランジスタとしても使用されている。IGZOにスズを添加した「IGZTO」を材料にしたトランジスタでは、従来のIGZOに比べて電気的な特性で2倍以上の高い性能を実現したという。

 IGZTOのトランジスタと、同研究所が開発している強誘電体材料を集積し、メモリデバイスを作製。これにより、3次元集積による大容量化や、プロセッサ直上への直接配線といった特徴を得られたとしている。

 開発を主導する小林正治准教授は、プロセッサとメモリの従来の課題について「メインメモリとプロセッサは別のチップで実装されているため、チップ間のデータ伝送効率が十分でなく、機械学習の計算処理のボトルネックになっている」と指摘。今回の技術はこのボトルネックの解決策になるとしている。

 これまでよりも狭い面積で大容量・高いデータ伝送効率を実現できることから、今後研究を進めて長期の信頼性を確保できれば、IoT機器など小型デバイスでの機械学習の効率化もできるという。

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