塗ることで5G電波やミリ波を吸収。電波の過剰な反射を抑え、通信への悪影響を減らす──化学メーカーの藤倉化成(東京都港区)が、そんな塗料を開発している。
エレクトロニクスなどを手掛ける事業者が集う技術展示会「TECHNO-FRONTIER 2021」(東京ビッグサイト、6月23〜25日)では、実際にこの塗料のサンプルを塗ったプラスチック板などを展示している。この塗料はどういった場面での活用を見込んだものなのか。同社の菅武さん(電子材料事業部 技術部 開発一課 工学博士)は、5G中継器の設備を軽量化したり、ミリ波レーダーの筐体を製造したりするときに役立つと話す。
塗料は黒色で、カーボンの粉末やエポキシなどで構成される。エポキシ、フェノール、金属、ガラスの素材に、スプレーや刷毛など4通りの方法で塗ることが可能。25度であれば約24時間、100度であれば約1時間で乾燥する。吸収できるのは5Gの28GHz帯やミリ波の77GHz帯など。
この塗料が5G中継器などの軽量化に役立つのは、中継器内部の「金属シールド板」という板の代替になるからだ。
通信事業者などが設置する5G中継器は通常、鉄塔など高所に設置される。中継器は文字通り他から来た電波を中継する役割を持つが、装置内で過剰に電波が反射すると、通信に悪影響が出る恐れがある。
現状では電波の反射を防ぐため、金属シールド板という設備が主に使われている。しかしこの設備は重く、多用すると高所に中継器を設置するときの重量制限に引っ掛かってしまうという。今回の塗料を使えば、樹脂製の部品で電波の反射を防げるため、設備の軽量化が可能としている。
ミリ波レーダーの筐体に使う場合も同様だ。塗ることで過剰な反射が防げるため、レーダーの精度を保ったまま、機器を軽量化できるとしている。
同社は2019年ごろからサンプルを基地局のメーカーなどに提供しており、現在はフィードバックを集めている段階という。利用する企業からは「シートに塗布し、それを中継器に搭載したい」「特定の電波だけ吸収するようにしてほしい」といった要望があり、今後はこれらに応えるべく、塗料の粘度や素材を調整を進める。
このうちシートについては、実用化できれば自社の新製品として販売したいという。「5Gやミリ波(の活用)が本格的になっているので、製品ラインアップに加えられれば」(菅さん)
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