小寺信良のIT大作戦
大幅にUIが変わる予定のAdobe Premiere Pro 狙いはどこに?(1/4 ページ)
6月22日公開の公式ブログで、米Adobeは「Premiere Pro」のUIが変わることをアナウンスした。同日公開されたβ版15.4.0.40では、すでに変更されたUIが体験できる。
ビデオ編集ツールのUI変更は、過去さまざまな混乱と地殻変動を引き起こしてきた。最も有名な事件が、Apple「Final Cut Pro」の7からXへのメジャーアップデートであろう。「iMovie」とは次元が違うプロ用ツールとして登場したFinal Cut Proだが、バージョンXのUIはiMovieのようになり、バージョン7までで実装されていた多くの機能がサポートされなくなった。
これに失望したユーザーが大挙してPremiere Proへ流れていったのが、2011年ごろのことである。当時macOS上で利用できるプロ向け編集ツールとしてはAvid「Media Composer」もあったが、Premiere ProのほうがFinal Cut Pro 7とUIや操作方法が似ていたので、移行するには現実的だった。
時は流れて10年、これまでビデオとは無縁であった人たちが、再びPremiere Proに流れ込みつつある。ビジネスマンは対面営業ができなくなった代わりに、商品説明のための動画を作らなければならなくなった。飲食店オーナーは、Instagramでの宣伝はもはや写真では効果がなくなり、動画に移りつつある。学校の先生はいつでも学べるオンライン授業のために、自分の講義を収録して編集する必要がある。
そういう人たちが、最初は無料ということで「DaVinci Resolve」に手を出すが、難解すぎて断念したあと、Premiere Proに戻ってくる、そういう図式である。例えばDaVinci Resolveには「メディア」「カット」「エディット」「Fusion」「カラー」「Fairlight」「デリバー」と7つのワークスペースに分かれている。ビデオ編集だけで2モードもあるのは、過去の経緯を知っている人なら「あーこれはねー」と説明できるのだが、初めて触る人には混乱の極みであろう。
そもそもDaVinci Resolveは、フィルム用のテレシネ装置と組み合わせた数千万円するカラーグレーディングハードウェアをソフトウェア化したところからスタートしており、それに編集機能などを追加していったものだ。MA(マルチオーディオ)ツールのFairlightなどは、80年代に一世を風靡(び)した高価なシンセサイザーの「Fairlight CMI」が源流にある。そんな「ガチプロ」用のソフトウェアが、一般の人に分かりやすいはずがない。
とはいえ、現行バージョンのPremiere ProのUIがそんなに分かりやすい かというと、そうでもない。こちらもワークスペースとして、「学習」「アセンブリ」「編集」「カラー」「エフェクト」「オーディオ」「グラフィック」「キャプション」「ライブラリ」と9つに分かれており、DaVinci Resolveと大差ない。
そんなPremiere Proを分かりやすく見せているのは、教材の多さだ。Adobe公式サイトでは、短い時間でポイントだけ学べる大量の動画チュートリアルを無償公開しており、いわゆる教則本もたくさんある。
DaVinci Resolveもチュートリアルビデオを公開しているが、どれもだいたい1時間ぐらいあり、学校に入ったつもりで勉強しないと追い付かない。必要な情報だけをピンポイントで探すなら、むしろユーザーが公開している、短い解説動画やテキストを探したほうが早い。
そんなPremiere ProがUIを大幅に変更するというのだから、大変だ。これまでの教材は全部作り直しになるからである。それでもUIを変更する必要があった、ということになる。
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小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
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