先日、こんなニュースが話題になっていた。
これがeスポーツなのか、という感想をもつ人もいるだろう。私もちょっとそう思う。
だが同時に「これでも条件を整えれば、eスポーツとして成立するだろう」とも考える。
それはなぜだろうか?
今回は改めて「eスポーツとは何か」を考えてみたいと思う。以前本メルマガでも扱ったテーマではあるが、その「2021年アップデート版」である、とお考えいただきたい。
この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年6月21日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。さらにコンテンツを追加したnote版『小寺・西田のコラムビュッフェ』(月額980円・税込)もスタート。
いきなりだが、eスポーツをeスポーツたらしめる最大の要因はなんだろうか?
人気ゲームであること? 賞金の有無? どちらも違う。それらは第一の要因に従属するもの、といっても過言ではない。
第一の要因、それは「一定のルールの元に競う姿を見て楽しむ観客がいること」だ。たくさんの人がゲームを「競技としてプレイすることを見る」環境が整って、はじめて成立したのがeスポーツである……と言ってもいい。
eスポーツでは、プロプレイヤーの存在や彼らに対する報酬体系の話が不可欠になる。産業としては必須のものだし、人気のバロメーターなので当然の話ではあるが、この点は「プレイの視聴者」が増えてはじめて生まれるものである。逆に、視聴者が少なかったからといって、そのゲームプレイがeスポーツでない、という理由にはならない。
一方、視聴者がいないか、視聴者がいたとしても、視聴者が納得する「特定の競技条件」が存在しない場合、それはeスポーツではない。単なる「ゲームプレイ」だ。
eがつく・つかないに限らず、スポーツと遊びの違いは「競い合う上でのルールの存在」だ。競い合う相手が他人ではなく自分であったとしても、一定の基準がないとちゃんと競うのは難しい。
典型的なeスポーツである格闘ゲームは、ゲームそのものが一定の公平なルールに基づく戦い。だから、その様子を「プレイしないが観戦する人」が生まれれば、自然とeスポーツになる。視聴者がいないと「ゲームプレイ」に近いが、「競い合っている様子が公開されることもある」「公開された試合に向けて練習・実績を重ねる」前提なら、それはやはりeスポーツだろう。
ゲームの短時間クリアを目指す「RTA」(Real Time Attack)も、はっきりとeスポーツである、といえる。
eスポーツといえば対戦、と思い、RTAのような「1人でクリアを目指す」ものはスポーツ性が薄いように思われるかもしれない。
だが、一定のルール(バグやチートの利用可否、連射コントローラーやホットプレートの利用の可否)の下にそれぞれが競い、さらにそれを見て楽しむ人がいるならば、それはタイムトライアル競技を見るようなものであり、立派なeスポーツだ。
ホットプレートでファミコンを暖めてバグを誘発して短時間クリアを目指す……というところまでいくとだいぶ「スポーツ」の概念から外れてきたようにも見えるが、「体重制限や禁じ手なしの格闘技」「改造レギュレーションが緩いドラッグレース」だと思えば違和感はない。
要は、他人と競うために一定のルールが存在することが重要なのであり、それが「無制限というルール」でも一向に構わないのである。逆に、「競う」要素がある以上、ルールがなければ成立しない。RTAと一般的なゲーム実況を分けるのはこの点になる。
「コンピュータを使った何かで競う姿を多数の人が視聴する」ことをeスポーツの定義とするならば、前出のExcelの例は間違いなくeスポーツである。
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