eスポーツとはニッチと一部のマスから構成されているわけだが、一方、「eスポーツを観戦する」という行為がマスになっていく過程では、極めて重要な要素もある。
それが「実況者」「解説者」の存在だ。
スポーツとeスポーツが持つ共通の特徴として、「プレイ人口よりも多くの視聴者が存在する」ということがある。そしてそれはメジャースポーツになればなるほど顕著だ。
視聴者のほとんどは、スポーツのプレイヤーほどゲーム内容に詳しくない。eがついてもそれは同様。メジャーなeスポーツは「そのゲームに詳しくなくても、なんとなく面白い」ものだ。
一般のスポーツでは、マイナー競技の場合、プレイ人口と視聴人口の差は小さくなりやすい。要は「プレイヤー自身が楽しむために見る」比率が高くなる。だがeスポーツでは、競技=ゲームプレイそのものの特殊性を楽しむ、という要素もあるので、プレイ人口としてはマイナー競技であっても、プレイヤーより圧倒的な数の視聴者がいる……という状況が生まれる可能性がある。前出のRTAなどは、プレイヤーは限られるのに視聴者は多いeスポーツの代表、と言ってもいいだろう。
一方で、コンピュータの上で成立する競技は、どんなものでもeスポーツになり得る。
だから「実況者」「解説者」が重要なのだ。
一般のスポーツ中継でも、良い実況者・解説者による中継は、そのスポーツを知らない人を熱心な視聴者に引き込む可能性を持っている。eスポーツはそれがより顕著だ。技術的な理解が必要だったり、ハイコンテクストな内容だったりが面白さに直結している場合が多く、それは「一見さん」には理解が難しい。
シンプルに勝ち負けが見える格闘ゲームであっても、詳細な技の駆け引きなどは、ちゃんとした実況者・解説者がいると理解度が大きく変わる。この辺もプロスポーツと同じなのだが、一線級の人々は、プレイを見る目の解像度がまったく違う。
冒頭に挙げたExcelの例は、これがとても難しい。どこが興味深く、勝ち負けがどうなっているかの理解が大変である。ハッキングなどもeスポーツになり得ると思うのだが、その過程をどう解説すれば、知識が少ない人にも楽しんでもらえるだろうか? これはなかなか難しい課題だ。
もちろん、少ない視聴者でもeスポーツはeスポーツだ。だが、今後も大きくなっていくのは「分かりやすさ」を備えた競技であることは間違いない。その時、一見複雑で理解しづらい要素があっても、それをうまくビジュアライズしたり、解説したりする行為と組み合わせて中継されれば、思いもよらない行為が「eスポーツ化」する可能性もある。
そんなふうに考えると、マイナースポーツのメジャー化も、eスポーツのブレークも、できることが見えてくる。
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