ただし、「理想的な量子コンピュータ」はまだ世界のどこにもない。今の量子コンピュータはノイズに弱く、量子ビットにノイズが乗った際にそのエラーを満足には訂正できない。ショアのアルゴリズムで実用的な計算をするには量子ビット数自体も約1万は必要とされており、“理想”に対してはまだまだ足りないのが現状だ。
だからこそ、理想的な量子コンピュータが登場したときにそれを使いこなすためのソフトウェアを今のうちから開発し、量子人材を育成し、今の量子コンピュータで何ができるのか、可能性を探らねばならない。
これまでも米国にある量子コンピュータをネットワーク越しに利用することはできたが、世界中の研究者が利用するため、順番待ちがある状態だった。今回のマシンは日本の企業や大学が専有して利用できるため、研究の加速が期待できる。
マシンリソースの確保と、研究・人材育成の促進が今回の日本設置の意義といえるだろう。
慶應大の量子コンピューティングセンター創設者でもある伊藤塾長は、量子コンピュータ研究を子育てに例える。
「人間でいえば少し前まではよちよち歩きだったが、今は運動会くらいには出られる状態」(伊藤塾長)
足が速い子どもは、今は大人ほど速くなくても、育ち方によっては将来オリンピックで金メダルも取れるかもしれないし、人類未踏の記録を打ち立てるかもしれない。量子コンピュータにはそんな期待が掛けられている。
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