ITmedia NEWS >

放射線防護用メガネ由来のサングラスがテレワークに向いている理由 「5G EGIS」はずり落ちない分かりにくいけれど面白いモノたち(2/3 ページ)

» 2021年07月30日 20時50分 公開
[納富廉邦ITmedia]

NQTシステムはずり落ちない

 まず、説明したいのは、「NQTシステム」です。design88の製品ではおなじみの機構なのですが、通常のメガネで使われている左右の鼻パッド、両耳の弦で顔に固定するのではなく、さらに左右のこめかみで支えるパッドを加えた6点で固定することによって、耳や鼻に掛かる力を分散しつつ、一度掛けたら、ずり落ちたりすることがないフレームを実現しています。

 実際、このフレームを使ってみると分かるのですが、これ、本当にズレません。顔を振ったり、走ったりしても大丈夫な上に、6点で支えているせいか、鼻が痛くなったりせず、長時間、楽に掛け続けられるのです。対放射線用の重い鉛入りレンズを入れた状態での長時間作業に耐える設計なのですから、一般用のレンズにはオーバースペックなくらいです。

photo design88のNQTシステム搭載のメガネフレーム装着例。こんな風に6点で支えるので、メガネがズレない。この機構はレンズの位置が重要になる累進レンズでも有効

 ずり落ちない、つまり、メガネを指で「くいっ」と持ち上げる必要が無いというところから「ノー・クイット」(NQT)と名付けられた、そのふざけた命名が決して大げさでもハッタリでもないのが、なんだかとてもすごいと感じます。

 腕のこめかみ用のパッドを付けている部分がU字になった構造も、フロント部分を固定しつつ、こめかみのパッドに掛かる力を必要最小限に止める仕掛けです。このおかげで、フロントのブレが抑えられると同時に、こめかみへの圧迫が少なくなっています。

 試作を繰り返しているだけあって、細部まで良くできたシステムです。杉本氏によると、実際に使っているユーザーたちからの評判も良く、今のところ、NQTシステムへの不満は出ていないということです。

photo 3300円(税込)で販売される、オプションのインナーフレーム。ここに度付きレンズを入れて使用する

 そして、今回新たに搭載されたのが、本体の中に度付きレンズ付きインナーフレームを装着するというスタイルです。

 私もそうですが、普段、メガネを掛けている人間にとって、サングラスは掛けたくてもハードルが高いもの。メガネの上から掛けるオーバーグラスタイプのものは大きくて持ち歩きにくいし、あまりにもデザインに選択肢が少なく、積極的に使いたいものではありません。

 かといって、フレームにクリップで留めるタイプは、手軽で良いのだけど、カッコ良いとはいえず、度付きのサングラスを作るのは、お金もかかるし、掛け替えも面倒です。調光レンズはカッコいいのですが、色が変わる速度によっては案外実用性が低かったりもして、価格的にも手が出しにくかったりします。

photo インナーフレームはこのように、内部に装着する。ブリッジ部分にあるマグネットで固定するので、簡単に着脱できる仕掛け

 そこで、今回、杉本氏が考えたのが、インナーフレームを装着するという方法。サングラスの内部に、度付きレンズを入れたインナーフレームをマグネットで貼り付けるというものです。

 これだと、簡単に着脱できる上に、サングラス自体のデザインに影響しません。さらに、インナーフレームは3000円と安価なので、複数用意しておけば、例えば、作業用の近くを見るためのメガネや、運転用のメガネなど複数のインナーフレームを1つのサングラスで使い回すこともできるのです。

 持ち歩いて、付け替えて使うことを想定して、フレームにはスリーブケースが付属するのも気が利いています。これも実際に試してみたのですが、着脱もスムーズだし、見やすいし、良くできた仕様だと思いました。

 「インナーフレームのアイデア自体は、すぐに浮かんだのですが、マグネットで留めるという方法にたどり着くまでも試行錯誤を繰り返し、実際の製作はミリ単位での調整が必要で、完成までにかなり苦労しました」と杉本氏。シンプルな解決策に見えるのですが、これまでに無かった方法だけに、実現のハードルは高かったようです。

photo インナーフレームを装着した状態を外から撮影。不自然さがなく度付きレンズを装着できる仕組みは画期的だ

 このインナーフレームのスタイルやNQTシステム、そして雨風・ゴミ・虫・飛沫等から守ってくれる防御力の高さは、サングラスの使用範囲を大きく広げました。従来の、釣りやドライブ、レジャー、外出時の眩しさや紫外線からの保護だけで使うにはもったいないハイスペックなメガネですから、他の用途にも使いたくなります。

 そこで、このサングラスは3種類のレンズが選べるようになっています。偏光レンズ、グラデーションレンズ、クリアサングラスレンズの3つです。

photo クリアサングラスレンズは、こんな感じ。ほとんどサングラスっぽさはないが、しっかりUVカットはできる

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.