ITmedia NEWS > STUDIO >

「情報量が濃すぎて胸焼けしそう」──個人が作った温泉マップに大反響 趣味で始めて7年間、開発に「5500時間以上」

» 2021年08月20日 18時21分 公開
[荒岡瑛一郎ITmedia]

 全国約3万6000カ所の宿、約1万5000カ所の入浴施設、約25万カ所のバス停、1193カ所の道の駅を地図上で探せる――こんな無料の地図サイト「ゆる〜と」が話題だ。このサイトを8月18日に紹介したツイートは20日までに約1.8万RTされ、「情報量が濃すぎて胸焼けしそう」などの声も。開発したのは横浜市在住のjohndoeさん。もともと「趣味の登山で使うバスを探すために作ったもの」だったが、約7年をかけて今の形に進化させてきたという。

ゆる〜とで表示した関東周辺(国土地理院の地図を使った機能限定版)
ゆる〜とで表示した日本地図(国土地理院の地図を使った機能限定版)

 ゆる〜とは、全国の宿や日帰り温泉、鉄道やバス路線、山の情報、各地の天気などの情報を、国土地理院の地形図やGoogleマップ上に重ねて表示するサイト。温泉は「天然温泉」「露天風呂」「サウナ」「銭湯」「足湯」など、種類別で表示できる。

 johndoeさんはゆる〜とのほか、表示内容をバス路線に絞った「バスルート」と、宿の探しやすさを重視した「やどココ」という別サービスもそれぞれ公開。機能の中身は「同じもの」だが、サービスごとに最初に表示する情報を分けることで、使い方をイメージしやすくしているという。

ゆる〜とで選べる温泉の種類(国土地理院の地図を使った機能限定版)

最初は温泉要素ゼロ、約7年に及ぶ機能追加の連続

 ゆる〜とはもともと、johndoeさんの趣味である登山に役立つバス路線を探せるサイトとして2015年1月にスタート。「(最初は)温泉や宿とは関係がなかったが、登山者に役立ちそうな機能を追加していった結果、(現在のように)発展してきた」という。

 バス路線の地図が完成すると、「下山後の温泉は最高。温泉も簡単に探せるようにしたい」「全国の温泉地マップが表示できると面白いかも」「旅に使えるサイトにするには、宿の情報も必要」と、次々にアイデアが爆発。思いつくたびにどんどん機能を増やしていった。

 さらに「バスのデータが古すぎる」と思い立ち、21年には公共交通機関の時刻表や運行経路をまとめたGTFSオープンデータの利用をスタート。「ここまで来るのに7年ほどかかった」といい、開発には「5500時間以上費やした」とjohndoeさんは振り返っている。

伊香保温泉の周辺(国土地理院の地図を使った機能限定版)

話題になってから1日で1カ月分のアクセス

 WebサイトにGoogleマップを埋め込むための「Google Maps Platform」は、地図の表示回数などに応じて利用料が決まる従量課金モデルで、一定の表示回数までは無料で使える。ゆる〜とは公開当初は無収益で運営していたが、18年のGoogleマップの仕様変更で利用料が負担になり、19年ごろにアフィリエイト広告を導入したという。ゆる〜と経由で楽天トラベルで宿を予約すると、宿泊料金の1%がゆる〜との収益になる。

 だが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛の影響もあり、アフィリエイト収益は「毎月4000円前後」(21年3月時点)の状況だ。Googleマップの利用料を賄いきれず、対策として、午前中は国土地理院の地形図を使った「機能限定版」を表示してきたという。

 さらに、ツイートが話題になった8月18日にアクセスが急増し、「1日で普段の1カ月分のアクセス数を大幅に超え」たため、8月中は常に機能限定版を表示する方針だ。

 johndoeさんは「7年間コツコツと作ってきたサイトが多くの方に見ていただけてうれしい」「このサイトを使って、公共交通機関を利用して温泉や山に行く人が1人でも増えてくれればうれしい」とサイトのQ&Aにつづっている

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.