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音楽番組の“民主化”をかなえてくれたSpotify「Music + Talk」 で、Appleはどう出る?(3/3 ページ)

» 2021年08月23日 11時33分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]
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SpotifyとApple Musicで音楽番組の民主化を盛り上げてほしい

 そして、「Music + Talk」が始まった。ポッドキャストのプラットフォームである「Anchor」にトークの音声をアップロードし、専用のUIでSpotifyの楽曲を指定してあげれば、音楽番組の完成だ。15年来の夢をSpotifyが実現してくれた瞬間だ。ちなみに、Anchorは2015年の創業で、2019年にSpotifyが買収している。Spotifyは、以前からポッドキャストにも力を入れていた。

 Anchorは、Spotifyを含めApple Podcast、Google Podcastsなど全部で8か所のアグリゲーションプラットフォーム同時配信が可能だ。筆者は以前からAnchor経由で、全てのプラットフォームに「70年代クラブ」を配信していたので、アップロード済みの既存コンテンツに、後からでも音楽を挿入できるかどうか試してみた。

photo Anchorは、8カ所のアグリゲーションプラットフォーム同時配信が可能。日本ではなじみのないプラットフォームもたくさんある

 しかし、いきなりエラーメッセージが出た。複数のプラットフォームへ配信している場合は、楽曲を挿入した番組は作れないのだ。音楽を使ったポッドキャストを作りたければ配信先をSpotifyに限定しなければならない。

 まあ、これは当然だろう。音楽パートは、Spotifyのストリーミング配信を利用する仕組みなので、他の音楽配信プラットフォームに楽曲が流れたらややこしいことになる。

photo 複数のポッドキャストプラットフォームへ配信している場合は、エラーメッセージが出て音楽を挿入できない

 ポッドキャストの本家ともいえるAppleの音楽ストリーミングサービスであるApple Musicから、このようなサービスが登場していないのはとても残念だ。

 Apple MusicのAPIを公開しているくらいなので、その気になれば難しい話ではないと思うのだが。

 ライバルのSpotifyは、リアルタイム音声コミュニケーションの「Greenroom」(Clubhouseみたいなもの)を始めるなど、音声コミュニケーション領域の開拓に積極的だ。

 今のAppleは、外野からは、Spotifyの後塵を拝しているように見える。Spotifyが2月に実施したバーチャルイベント「Stream On」でポッドキャストの有料化を発表したら、後に続けとばかりに、Appleも5月からApple Podcastの有料化を進めた。

 Apple Music Radioでは、トーク番組による音楽紹介に力を入れているが、これは、プロDJの領域であり、こと情報発信という意味では、われわれ一般庶民とは無縁の世界だ。

 iTunes Music Storeで、音楽業界に革命を起こした企業なのだから、他の企業の二歩も三歩も先を行く、一般ユーザーにフレンドリーな情報発信サービスを期待するのは、ユーザーのエゴだろうか。

 「Music + Talk」について語るこの原稿、いつのまにか、Apple Musicに対する批判になってしまったが、Music + Talk的なサービスこそ、最初にApple Musicで実現してほしかった。Spotifyを双璧を成す音楽サブスクだけに、切磋琢磨して、後追いでもいいので、音楽番組の民主化を盛り上げてほしい。

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