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M1 Macに対応した「DaVinci Resolve 17.3」、3倍速いは本当か小寺信良のIT大作戦(4/4 ページ)

» 2021年08月31日 08時00分 公開
[小寺信良ITmedia]
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 そこで新バージョンのレンダリング時におけるCPUとGPUの履歴を追ってみた。

 M1チップは、4つが常時使用される高効率コアで、4つが特に負荷が高い時に使われる高パフォーマンスコアになっている。この使い分けも気になるところだ。同じコンテンツを、最初は4K解像度のままで書き出し、次にHD解像度にダウンコンバートしながら書き出してみた。

 リサイズなし、4Kそのままのレンダリングにおいて、GPU負荷が高くなっている部分がオープニングタイトル部と、DVEエフェクト部である。エフェクトがある部分だけGPUがフルパワーで回っており、エフェクトが少ない部分は半分程度で回っている。コンテンツ後半に30倍速の早回し処理があるが、その部分はGPUをあまり使っておらず、CPUメインの処理となっている。

photo リサイズなしのレンダリング

 一方HDダウンコンバートしながらのレンダリングでは、全体にわたってGPUがほぼほぼフルパワーで回っている。違いは解像度変換だけなので、解像度変換にかなりのGPUパワーが取られる。

photo ダウンコンバートしながらのレンダリング

 またDVEエフェクトは、CPUのうち効率性の4コアでほぼほぼ回しており、パフォーマンス側の4コアをほとんど使っていない。負荷が高いエフェクトなのに、これは惜しい。

 後半でGPUがグッと下がっているところは、30倍速早回し部分だ。ダウンコンバート処理も含め、この部分はGPUを使わず、CPUでの処理ということだろう。

 この結果から、動画編集の特定の処理はそれを投げる先が決まっているのが分かる。常時うまく負荷分散できれば時間短縮できるが、処理を投げる先が1カ所に集中してしまう場合は、それほどパフォーマンスが上がらない。

 とはいえ、この処理はどこを使うというのをユーザーが自身が把握しつつコンテンツを作っていくのは、本末転倒だ。クリエイターはそんなことは気にせず、やりたいことをやりたいようにやるだけである。

 ユーザーがどのような処理を好んで行うかは千差万別で、開発側としてもなかなか予測ができないところ。処理によっては、空いているリソースがまだまだ存在するのも事実だ。

 将来的には、空いているコアやユニットにバランスよくタスクを投げられるよう、1つのエフェクトであっても複数のエンジンを併用したり、あるいはその都度空き状況を見ながらエンジンを切り替えていく、動的な最適化処理になっていくのかもしれない。

 バージョン17.3の「3倍速い」は、直接的なパフォーマンスとしては観測できなかったが、エンジンの基礎体力としては3倍速になる可能性は確認できたように思う。あとはどのように負荷をマネジメントしていくかで、新エンジンが本当に3倍速いと感じられるかが決まるだろう。

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