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いま見られている動画とは? トレンドに見るYouTubeの今小寺信良のIT大作戦(3/4 ページ)

» 2021年09月13日 11時25分 公開
[小寺信良ITmedia]

「インフォーマル感」とは何か

 2つ目のトレンドとして、「インフォーマル感」がある。インフォーマルとは、フォーマルの逆で、公式ではない、形式張っていないといった意味がある。つまり、素の姿を見せたり、自然体であったりといったことがウケる時代となった。

 代表的なものとしては、タレントのメークアップ動画や、チャンネル総視聴回数10億回を誇る「THE FIRST TAKE」が挙げられている。昨今はInstagramでも海外セレブが加工なしの姿を見せて称賛されている流れもあるが、これまで作品として作られた姿と、ありのままの姿のギャップであったり、セレブにもリアルな日常があるという事実への気付きが注目されているということだろう。

 そもそもインフォーマルな姿を大人数の撮影スタッフが撮るというのもおかしな話なわけで、日本でも流行ったリアリティー番組も、実は台本なきドキュメンタリーではなく、台本ありの進行構成に基づいている。演出された姿をリアルだと勘違いして出演者への誹謗中傷に走った人も多く、「テラスハウス」は出演者の自死という形で終了を迎えた。事実関係を曖昧にしたままのコンテンツ制作は、視聴者をだます結果となり、コントロール不能となるという問題がある。

 こうした反動もあり、視聴者は本物のインフォーマルを求めるようになった。THE FIRST TAKEの一発撮りは、演出の要素を限りなく排除する制作方法であり、すっぴんから始めるメークアップ動画も同様である。

 こうした動画の特徴は、プロの撮影者・制作スタッフの存在を限りなく排除することである。本人が自分で撮るプライベートショットは、一種のセルフィーではあるが、一瞬で終わる写真と違い、手持ちでは成立しないため、固定カメラとなる。

 これまで「三脚」というものは、そこそこ写真が好きな人でも、長時間露出以外ではそれほど使うものでもなく、また話題になることも少なかった。それがデジタルカメラにせよスマートフォンにせよ、動画撮影のために三脚やスマホスタンド的なものを多くの人、あるいはタレント自身が当たり前に使うようになったというのは、セルフィーがまだ写真だった3〜4年前では考えられなかったことである。

 また先日発表されたDJIのスマホ用ジンバル「OM 5」は、ジンバルヘッドがロッドで伸び、フェーストラッキングや、ジェスチャーによる撮影の開始・停止といった機能がある。これは他者を撮影するためというより、一人で自分を動画撮影するための機能であり、単純な固定カメラから一段ステップアップするための機能でもある。

photo DJI OM 5

 緊急事態宣言で外に出られない反動もあるだろうが、インフォーマル感を感じさせるコンテンツからは、自宅撮り、固定カメラ、自己完結といった要素を感じさせる。

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