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現povoユーザーが物申したい、「ココが違うよpovo2.0」小寺信良のIT大作戦(2/2 ページ)

» 2021年09月30日 08時00分 公開
[小寺信良ITmedia]
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 また2.0からは1カ月単位ではなく、日にち単位になった点もモヤッとするところである。1.0の1カ月単位では、毎月決まった日にちに残量がリセットされる。前月の余った分は繰り越しできないが、リセット日が動かないので、利用ペースが計算しやすい。

 一方30日となれば、毎月毎月ちょっとずつ日にちがずれていくことになる。1日にスタートしても、31日ある月は、翌月1日ではなく、その月の31日でリセットされるわけだ。早めにリセットされるのがうれしいか、それとも1日分損したと思うか。

 しかも、30日過ぎたあと、ちょっと穴埋めに「1GB 7日間390円」といったトッピングを使うと、次のリセット日が1週間後になり、どんどんずれていくことになる。全く使わない期間があるとか、テンポラリ的にデータ容量を埋めるみたいなフレキシブルな使い方もできるという考え方もあるが、次のリセット日がいつになるのか、いつも気にしていないといけないというのは面倒ではないか。

 そもそもpovoのような新料金体系誕生の背景には、通信料金を下げるというだけでなく、従来プランの分かりにくさを解消するという目的もあったはずだ。povo2.0では、考えて利用すればトータルでは価格が下がるかもしれないが、何をどうすればお得なのかを利用者側に丸投げした時点で、分かりやすさは後退したともいえる。

 毎月20GBでは余っていたという人は、2.0への移行で便利になるのだろうか。例えば毎月10GBぐらいしか使わないとすれば、週平均2GB強を使うことになる。そうなると「1GB 7日間 390円」のコースでは足りない。その上は「3GB 30日間 990円」しかないのが、それでも足りない。

 つまり3GBから20GBの間隔が広すぎて、価格的にも990円からいきなり2700円と大きな開きがある。早い話、多くの人は20GBトッピングに落とし込まれることになる。これまで1カ月2728円だったものは、povo2.0に移行すると20GB 30日間 2700円になる。

 povo1.0ユーザーは乗り換えなければいい、という話ではあるが、では「お客さま一人一人が自分のライフスタイルにあわせて利用するプラン」という話はどこへ行ったのか。本来なら10GB 30日 1500円など、もうちょっと間を刻むべきなのだろうが、そこが最ももうけが出ないゾーンということなのだろう。

毎月20GBでは足りなかった人は?

 今回のデータトッピングには、60GB 90日間や150GB 180日間といった大型プランがあるのも目玉となっている。だがこれも毎月20GBでは足りなかった人には朗報なのか、モヤッとするところだ。

 例えば60GB 90日間のトッピングは、30日20GB×3であり、料金的には1.0よりも割安になるが、30日当たりのデータ容量が増えているわけではない。有効期限が90日あるので、今月使いすぎても来月節約するなどして融通がきくというだけの話で、結局は20GB 30日がベースである。

 データ通信で最も容量を食うのは、一般的に考えれば動画サービスだ。YouTubeやサブスク系動画配信サービスを使って視聴すると、20GBはだいたい40〜60時間分といわれている。毎日2時間動画を見ていれば、それだけで20GBを溶かしてしまう。

 また昨今はビデオ会議も多くなってきた。これもやはり20GBで60時間分ぐらいである。娯楽としてYouTubeを見るのは我慢しろよって話だが、仕事の会議を我慢するわけにはいかない。

 とはいえ、こうした動画利用を1カ月単位で、Wi-Fi環境のない場所でやらなければならない人というのはどれぐらいいるだろうか。以前ならノマド族も多数いたが、モバイル回線でしか仕事しないという人は、ITに強い職場ほど減ってきている。もちろん、スマホの通信容量を当てにして固定回線を引いていない学生や、短期の単身赴任で固定回線を引くまでもないという人は、ゼロではないだろうが、少数派だと思われる。

 一方で授業がほぼオンラインになってしまった大学生などは、1日6時間程度動画を見っぱなしになってしまう。それぐらいの長時間ともなれば、10日ぐらいで20GBを使い切ってしまうことになり、もはやスマホのモバイル回線でどうにかしようというのは無理があり、別の手段を考えるべきだ。

 20GBを超える層というのはある程度いると思われるが、そうした生活が毎月ずっと続くのであれば、60GB 90日間や150GB 180日間といったトッピングでクリアできるものでもない。2カ月3カ月先のデータ利用量の計画が立てられる人ならいいが、それもまた少数派だろう。

 そう考えると、こうした長期間プランをおすすめできる人は一体誰なんだよ、ということになる。1カ月20GBを超える層というのはある程度いると思われるが、そうした生活が毎月ずっと続くのであれば、60GB 90日間や150GB 180日間といったトッピングを果てしなくツメツメで購入していくことになる。「金ならある、ギガをよこせ」という層に対応するということなのかもしれない。

 これまでMVNOやWi-Fiルータの定額使い放題のサービスで、とてつもない量を消費して事業を破綻させる人たちが存在した。だが使った分だけきっちりお金を取られるなら、そうした層は寄り付かないだろう。

 一方30日3GBじゃ足りないが、データが余ってもいいからとにかく月割で計算してお得ならそれでいいという人もいるだろう。日々のルーチンが決まっておらず、使うときは1日10GBとか使うが、使わないときは2週間使わないみたいな超ムラのある人なら、もっと低価格なトッピングで、使う日だけ「データ使い放題(24時間)300円」を組み合わせたほうが安い。

 筆者は月に20GBで収まるタイプだが、仮に2.0へ移行して「60GB 90日間 1980円」に変えたとしても、月額500円ぐらい安くなる程度だ。90日や180日といった長期間プランは、利用ルーティンが最適化されるまで、その期間を数回回ざるを得ないだろう。

 ということは、お得感が得られるまで半年〜1年かかるということになる。それと引き換えに決済日がどんどんずれていって、常に残量を気にしながら生活するのは、面倒すぎないか。それなら1.0のままでもいいし、シンプルで確実に安いプランが提供されるなら、他キャリアへ乗り換えも検討したい。

 同時に始まる「#ギガ活」のように、ギガやポイントの運用が楽しくてしょうがない人たちにはチャレンジしがいのあるプランかもしれないが、そんなことばっかりもやってられないオジサンとしては、一度行ったら戻れない片道切符のpovo2.0に、どうしても警戒感を抱いてしまうのである。

【修正履歴:2021年9月30日午後5時30分 povo2.0の提供トッピングについて一部不正確な記述があったため、文章内容を改めました】



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