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蛾の目を模した「モスアイ技術」、抗ウイルス効果を加速か シャープが研究発表

» 2021年09月30日 13時19分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 シャープは9月30日、“蛾の目”の構造を模した「モスアイ技術」で加工した独自の樹脂フィルムが、表面に付着した新型コロナウイルスを10分間で99.675%不活化したとする研究成果を発表した。「新型コロナウイルスの接触感染防止に有効である可能性が考えられる」(奈良県立医科大学医学部 微生物感染症学講座の矢野寿一教授)。

 樹脂材料の表面に微細な突起が並ぶモスアイ構造を形成したフィルムを使い、加工していない同じ素材と感染価(感染力を持つウイルス量)を比較した。モスアイ構造を持つ方は10分間で99.675%、30分間で99.959%減少した。フィルム表面をアルコールで100回清掃しても30分後の感染価は99.959%を維持した。

 ウイルスを不活化するメカニズムについて詳しいことは分かっていないが「独自の樹脂材料とモスアイ構造の相乗効果と考えている。樹脂材料の効果を表面積の大きなモスアイ構造が加速するのではないか」と分析する。

 夜間も飛行できる蛾は、目の中にnm(ナノメートル)単位の微細な突起を多く持ち、光を反射せず効率良く取り込んでいるという。シャープはそれを応用し、2012年から液晶テレビ「AQUOS」などのアンチグレア(低反射)処理に活用。2020年にはモスアイ加工したフィルムを貼ったフェイスシールドを発売したが、これも視界を妨げる“映り込み”を抑えるのが目的だった。

 一方、2015年から17年にかけて福島県立医科大学医学部(錫谷教授)と実施したモスアイ構造の共同研究で黄色ブドウ球菌などに対する抗菌性が確認された(英語論文)。以来、産学連携で検証を進めてきたという。

 シャープは今後、モスアイ技術を抗ウイルス効果が期待できる「Anti-Virus Nanostructure」(アンチウイルス・ナノストラクチャー)と称し、技術開発に取り組む。具体的な応用分野や商品展開は未定としている。

モスアイ技術は液晶テレビなどのアンチグレア処理などに活用してきた(画像は2012年の液晶テレビ発表資料)

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