ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >

スティーブ・ジョブズ没後10年 Appleの隆盛を支えた「ジョブズとクック」が成し遂げたこと(1/4 ページ)

» 2021年09月30日 13時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 2021年もiPhoneが発売され、その関連の仕事はピークを超えつつある。日本でiPhoneが発売されたばかりの頃(すなわち10年ほど前まで)は、レビューや分析の仕事以上に、テレビや新聞向けに「iPhoneとはなにか」という解説の仕事が多かったようには思う。すでにスマホは生活の道具として定着しているので、今はレビューなどが軸になったわけだが。

 そんなiPhoneを生み出した、スティーブ・ジョブズが亡くなってから、もうすぐ10年がたとうとしている。彼が偉大な人間であり、世界を変えた人物の1人であることに疑いはない。

2010年1月、iPadの発表会でのスティーブ・ジョブズ。2011年10月5日に亡くなってから、もう10年がたとうとしている

 では、現在のAppleのCEOであるティム・クックはどうか?

Appleの現在のCEOであり、ティム・クック。画像は9月のApple発表会の映像より

 「今のAppleにジョブズがいれば」という批判をする人は少なくない。だが、ちょっとそれもズレているんではないかな……と筆者は考えている。iPhoneを生み出したのは、「ジョブズとクックというタッグだった」と考えているし、クックがAppleを引き継いだ結果として、これほど巨大な産業が出来上がったのだから。

 今回はジョブズ没後10周年でもあり、改めて「ジョブズとクック」についての、筆者の分析を語ってみたいと思う。

この記事について

この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年9月27日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。さらにコンテンツを追加したnote版『小寺・西田のコラムビュッフェ』(月額980円・税込)もスタート。

タッグチームだった「ジョブズとクック」

 Appleの製品、特に1997年にジョブズが同社に復帰して以降の製品に、ジョブズの発想が大きく関与していたのは、皆さんもご存じの通り。Appleは、創業期・1985年から1997年まで、1997年以降で、それぞれ別の企業の顔をしているくらい違う。その功績はここで説明しなくても、十分ご存じのことだろう。

 今のAppleを支えているハードウェアは、どこかにジョブズ時代のルーツがある。Apple Watchはジョブズ没後にスタートしたものであり、ハードウェア的に直接的な関わりはないが、watchOSのコアがiOSであり、さらにそのコアがNeXT時代の産物であること、プロセッサもiPhone向けに開発されたリソースを引き継いでいることなどを考えると、「どこかにジョブズの血が流れている」と言っても過言ではない。素晴らしい功績だ。

 一方、ジョブズの力だけでAppleの隆盛が成し遂げられたのか、というと、決してそうではない。

 ティム・クックは、ジョブズがAppleに復帰した翌年、1998年にAppleに入った。IBMやCompaq(HPによる買収前だ)を経て、将来的にAppleの調達・セールスなどを統括する立場になることを前提としての合流だった。

 クックがAppleのCOO(最高執行責任者)になるのは2005年になってからだが、調達・セールスの両面をずっと担当してきた。輝かしく語られる「ジョブズ復帰後のApple」を実務面で支えていたのは、実質的にティム・クックなのである。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.