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Facebook Connect基調講演まとめ 社名変更は「One more thing...」として最後に発表

» 2021年10月29日 12時20分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 米Facebook(同日から社名はMetaになった)は10月28日(現地時間)、今年で8回目になる年次VR/ARイベント「Facebook Connect」を開催した。本稿では発表されたことを時系列で関連に紹介し、詳細記事へのリンクをまとめる。

 6月のオンラインによる年次開発者会議の基調講演とは異なり、マーク・ザッカーバーグCEOがイベント全体を仕切った。オープニングの前説で、自宅のソファに座ったザッカーバーグ氏は「これからわれわれの未来のビジョンをシェアする。一部の人々は、われわれがなぜこうしたことに取り組んでいるか疑問に思っている。その答えは、私がテクノロジーはわれわれの生活を改善すると信じているということだ。また、未来というものは意志を持って自ら構築するものだと信じている」と語った。

 zuck

 イベントの冒頭でザッカーバーグ氏は、ここ数年繰り返している「プラットフォームはテキストから画像、動画へ、そしてVRとARへ」という主張を語り、没入型プラットフォームとしての「メタバース」について説明した。「メタバースはモバイルインターネットの後継プラットフォームになると信じている」。

メタバース体験の紹介

 メタバースを想像するのは難しいので、「近い将来の製品について話すいつもの基調講演とは違い、未来について話す」とし、ヘッドセットやARメガネを装着すると見える環境やアバターを紹介した。

 abator ザッカーバーグCEOのアバター。部屋自体もバーチャルなスペース

 アバターになったザッカーバーグ氏は間もなくCTOに就任するボズことアンドリュー・ボスワース氏のアバターなどとバーチャルな会議室で会話し、その途中で(メタバース内で)妻のプリシラ・チャン氏からの動画チャットの着信を受けて会話したりしてみせた。

メタバースのアバターはユーザープロフィール

 メタバースに重要なのは、存在しているという感覚で、そのためにはアバターに本人の表情やボディランゲージを反映させる必要がある。メタバースのアバターは3Dで、本人に似たリアルなものにも、ロボットや架空のヒーローのようなものにもできる。もちろん着替えることも可能だ。

 「重要なのは、アバターはメタバース内のどんな世界(スペース)でも、どんなアプリやゲームででも、同じ様に行動できることだ」

アバターでメタバース内の「スペース」をテレポート

 サードパーティーや個人はメタバース内にスペースを構築でき、ユーザーは好きなスペースに「テレポート」できる。

 そのために、メタバースはインターネットのように相互運用性が必要だ。また「メタバースは最初の1日目からプライバシーと安全性を組み込む必要がある」とザッカーバーグ氏。

 アバターでメタバースを自由にテレポートできる世界は、5〜10年後には実現でき、メインストリームになると同氏は語った。

HorizonにHomeを追加

 「Horizon」は2019年の「Oculus Connect 6」で発表したメタバース(当時は“VRワールド”と説明していた)。10月8日にメタバース全体の名称を「Horizon Worlds」に改称している。ユーザーは誰でも、Horizon Worldsで自分のスペースを構築できる。

8月に発表した「Horizon Workrooms」は、メタバース上の仕事のためのスペースという位置付けだ。

 ここに新たに「Horizon Home」を追加する。これはユーザーのアバターがくつろぐ自宅のVRスペースだ。ユーザーがヘッドセットを装着して最初に入るのがこのHorizon Homeになる。将来的には友達をホームに招待したり、友達のホームを訪問したりできるようになる。

 home 「Horizon Home」

Messengerに「Calling in VR」

 「Calling in VR」は、メタバース内からメタバース外にいる友達とFacebook Messengerで会話できる機能。

 call 「Callin in VR」

「Spark AR」の拡張

 「Spark AR」は2019年にInstagramストーリーズのARエフェクト構築プラットフォームとして発表された。当時は顔のフィルターが中心だったが、最近のアップデートで全身や周囲の環境にも使えるようになってきている。

 このSpark ARのARメガネサポートツールセットを来年にも提供する。将来的には公共スペースのジオマップをサポートし、ロケーションベースのAR体験を可能にする計画だ。これにより、ARメガネをかけての旅のガイド付きツアーや現実世界でアイテムを探すゲームなどを開発できる。

 Spark AR Studioでは、身体や手の追跡も利用可能になる見込み。

 spark Spark AIのオブジェクトは触れると反応する

「Grand Theft Auto: San Andreas」や「BladeAnd Sorcery」などが「Oculus Quest 2」に

 PS2でヒットしたゲーム「Grand Theft Auto: San Andreas」の「Oculus Quest 2」版を開発中であることも発表した。リリース予定などは不明。

 「最高のゲームの1つだと思うこの新バージョンは、GTAの世界をVRで体験する全く新しい方法をプレイヤーに提供する」(ザッカーバーグ氏)

 また、WarpFrogのヒットゲーム「Blade And Sorcery」のQuest 2版が11月に19.99ドルで発売になる。

Quset 2でのフィットネスのための「Active Pack」

 Quewst 2を装着して行うフィットネスアプリは既に多数出ている。例えば「Supernatural」などではコントローラーを持った両手を激しく動かすことになる。こうした運動でコントローラーを振り落としたり、汗でヘッドセットを汚さないようにする「Active Pack」を来年発売する。

 active pack 「Active Pack」

Horizon Workroomsのカスタマイズ機能

 年内にHorizon Workroomsをカスタマイズできるようにする。オフィスにロゴやポスターを掲げられるようになる。

 また、Horizon Home内に個人用Workroomを設置できるようにもする。

 ユーザーからのフィードバックに基づき、Quest 2にプライベートとは別に仕事用のアカウントでログインできるようにすることも計画中だ。

没入型学習コンテンツ開発に1億5000万ドル投資

 メタバースを教育に活かすため、コンテンツ製作者に1億5000万ドル投資しているという。

メタバースは(Appleのような)ウォールドガーデンにはしない

 ここでザッカーバーグ氏は、米Appleの名前こそ出さなかったが、「われわれは別のアプローチを選ぶ。可能な限り多くの人々にサービスを提供するために、サービスのコストは安く、時には無料にし、広告ビジネスも小規模企業が利用できるよう低価格にし、Oculus Storeはウォールドガーデンにはしていない」と語った。

 メタバースも同様に開かれたプラットフォームにしていくという。

「Presence Platform」

 「Presence Platform」は、開発者がQuest 2でのMR体験を構築するための新たなプラットフォーム。手の動きを構築するための「Interaction API」など多数のAPIを提供していく。

 presence Presence PlatformのInteraction API

 開発者はこのプラットフォームで構築したMRアプリをOculus Storeで公開できる。

国際業務担当副社長ニック・クレッグ氏、Facebookのプライバシーを語る

 ザッカーバーグ氏は次に、「メタバースを実現するためには(開発者サポートとは別に)重要な考察が必要だ」と語り、国際業務担当副社長のニック・クレッグ氏との対談を始めた。

 nick 国際業務担当副社長ニック・クレッグ氏

 クレッグ氏は「テクノロジーの発達スピードは時に速すぎ、政策決定者や規制当局がそれに追いつけなくなることがある。それで企業は批判されることがあるが、企業は規制当局が追いつくまで待ってはいられないと感じている。だが、メタバースに関してはまだ本格稼働までに数年ある」と語った。

 ザッカーバーグ氏は「先程も言ったように、メタバースには最初からプライバシーと安全性を組み込む。これは私が過去5年間で学んだことを反映している」と語った。

ハイエンドヘッドセット「Project Cambria」(コード名)

 「Project Cambria」というコード名の下で開発中のハイエンドヘッドセットも披露した。新しいセンサーを搭載しており、顔の表情をトラッキングし、VR空間上のアバターに反映できる。

 cambria

 「Oculus Quest 2」の後継モデルではなく、ハイエンドモデルで価格もより高価になる見込み。詳細は2022年に発表する。(関連記事

ARメガネプロジェクト「Project Nazare」(コード名)

 9月に発売したスマートグラス「Ray-Ban Stories」の延長線上のARメガネプロジェクト「Project Nazare」も発表した。「われわれの初の完全ARメガネになる」という。

 このARメガネでWhatsAppのチャットをしたり、キッチンテーブル上でARゲームをプレイしたりできるデモ動画を紹介した。

 バッテリーの改良やいかに軽量化するかなど、まだ解決すべき課題は多数あるが、開発は進んでいるとザッカーバーグ氏は語った。

メタバースのロードマップ

 Oculusのチーフサイエンティスト、マイケル・アブラッシュ氏が登場し、AR/VRのロードマップを示した。

 アバターのフォトリアリスティックな表情を支える技術や、3月に発表した脳からの神経信号を読み取るリストバンドの進捗、バーチャルな服を手で掴んで引っ張ったり揺らしたりする技術などを紹介した。

 abra 将来的には写真のような自分のアバターで好きな髪型やメイクが可能になるという
 リストバンドでのテキスト入力デモ

 デモで披露された技術はまだ開発段階で、例えば紹介したようなアバターを作るのにも高性能なハードウェアが必要という。

 なお、Oculusというブランドはなくなり、商品やサービスの名前は今後、「Meta ●●」に統一していくと、ボズワース氏が発表している。

One more thing...

 噂されていた社名変更についてはザッカーバーグ氏が「今日は最後にみなさんにお伝えしたいことがもう1つあります」として発表した。

 onemorething

 ザッカーバーグ氏は社名変更は「われわれが誰で、何を構築したいのかを反映するため」と熱く語った。既にFacebook、Instagram、WhatsApp、Messenger、Oculusと様々なサービスを運営し、さらにHorizonのメタバースも立ち上げた今、Facebookという名称は、同社のすべてを網羅しておらず「われわれはメタバース企業とみなされたいと思っている」という(関連記事1関連記事2)。


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