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PC互換機はIntelだけではない ジョブズのいないAppleが進めたPRePとCHRP“PC”あるいは“Personal Computer”と呼ばれるもの、その変遷を辿る(2/4 ページ)

» 2021年10月30日 08時00分 公開
[大原雄介ITmedia]

 1993年にCEO職に昇格したスピンドラー氏だが、当時Macintoshは急速にシェアを落としていた。

 写真2はRedditに掲載されていたものだが、1992年にはそれでも8%ほどあったマーケットシェアは、1996年には4%ほどにまで急落している。

photo 写真2:1993年辺りをピークに、急速にシェアを落としていく。底を打つのは2003年辺り

 マーケット全体はそれでも成長しているから、売り上げそのものは増えていた(例えばstatistaのこちらを参照)とはいえ、長期的なビジネスを考えたときには先細りになる可能性が高かった。

 本質的な問題で言えば、この時のMacintoshはSystem 7ベース(7.0、7.1)でなんというかいろいろひどかった。その後System 7.5も1994年にリリースされているが、多少マシになったという程度で、急速に使い勝手を上げていたWindows系列には遠く及ばなかった(ちなみに筆者はこのSystem 7.5のタイミングでApple Computerと決別している)。

 もちろん当時のWindowsには無かった(今も怪しいが)カラーハンドリングとか解像度のハンドリングとか、「Macintoshでしかできないこと」が要求されるデザインとかでは根強く使われていたが、逆に言えばそれ以外の部分ではWindowsと本質的に大差なく、するとアプリケーションの数とか入手性などでどうしても難が出てくる。本質的にはまずOSを何とかしろよ、という話になる訳だが、それが実現したのはNeXTを買収してNeXTSTEPをベースとしたMac OS Xが出てからの話である。

 ただそれはそれとして、とにかくインストールベースが少ない限りアプリケーションを手掛けるベンダーにとってMacintosh向けマーケットはおいしいビジネスにはならない。そのためには出荷台数を増やす必要があるが、Apple Computerにはその余力がない。となると、Macintosh互換機をリリースし、そこにOSをライセンスするという、Microsoftと同じビジネスに舵を切るのは、一応妥当性のある判断である。

 実はこれはIBMとMotorolaにとってもうれしい決断であった。大金をかけてPowerPCを開発した以上、両社はより多数のPowerPCチップが売れてほしかった。そのためにはMacintoshの市場が広がることが望ましく、もしMacintosh互換機ビジネスがうまく立ち上がれば、売り上げが大きく増えることが期待できるからだ。

 IBMにはもう1つ別の思惑もあった。同社はPowerPCをワークステーションやローエンドサーバ向けにも展開するつもりがあった。OSとしてはAIXとかOS/2な訳だが、こうしたOSを移植するためには、ブートローダーの基本的な仕組みとか、OSからハードウェアにアクセスするための仕組みなどに関して標準化されている方が移植がしやすい。もしこの辺りをMacintosh互換機と共通にできれば、例えば将来的にはMacintosh OSとOS/2とAIXが全部動く、なんて仕組みができることになる。

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