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» 2021年11月17日 08時00分 公開

食べずに「のどごし」を体感できる装置、電通大が開発 バーチャル環境で飲食を再現Innovative Tech

電気通信大学の研究チームは、喉の皮膚を引っ張る方法で、食べ物を飲み込んだ感覚を再現する嚥下感提示装置を開発した。何も食べてないにもかかわらず、「のどごし」を提示できるという。

[山下裕毅,ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 電気通信大学野嶋研究室の研究チームが開発した「Grutio: System for Reproducing Swallowing Sensation Using Neck-Skin Movement」は、喉の皮膚を引っ張る方法で「食べ物を飲み込んだ感覚」を再現する嚥下感提示装置だ。何も食べてないにもかかわらず、飲み込んだ感覚だけを提示できるという。

(A、B)プロトタイプの概要、(C)粘着シートを使い、喉に対して垂直方向にプロトタイプを接着した状態、(D)水平方向に接着した状態

 これまでにも、口腔内の触覚提示や電気味覚などを使い、口の中に食べ物を入れずバーチャルに飲食体験を提供する研究は行われてきた。一方でそのほとんどが口腔内のアプローチで、喉を通る際の再現はほとんどない。

 飲食物が喉を通る感覚を嚥下(えんげ)感といい、味覚や口腔内の感覚と同様に、飲食において重要な要素だ。「のどごし」とも呼ばれ、炭酸や麺類を食べた際の表現に使われる。今回はこの嚥下感に着目し、何も食べていない状態で飲み込んだ感覚の再現に挑戦する。

 通常の嚥下運動では、骨や筋肉の動きに伴って喉の皮膚が動くため、意識的な動作に加えて従属的な動作が起こり、感覚が得られる。研究チームは、この喉の皮膚が動くという従属的な動きを物理的に再現することで、意識的な知覚を誘発できると考えた。

 実現するため、喉周辺の皮膚を物理的に動かすデバイスを試作。デバイスは、サーボモーター、アジャスター付きベルト、粘着シート、マイコンで構成される。粘着シートでデバイスを喉に接着し、サーボモーターでベルトを下に引っ張ることで喉の皮膚に刺激を与える。接続したノートPCからのコマンドで動作し、あらかじめプログラムされた動作を実行する。

装着した状態を横から見た様子

 実験では、垂直または水平に並べる2種類の方法でデバイスを接着し、嚥下感が再現されるかを評価した。被験者は、嚥下障害がなく頸部(けいぶ)皮膚に異常のない学生9人。結果は、全員が嚥下感を感じられたという。

 また装置の速度を下げると、飲み込んだものの粘度や大きさが変わることを被験者は感じたという。この結果は、食べ物の硬さや粘度、サイズ感など、よりリアルな嚥下感を提示できる可能性を示唆した。

実験中の様子

Source and Image Credits: Izumi Mizoguchi, Sho Sakurai, Koichi Hirota, and Takuya Nojima, “Grutio: System for Reproducing Swallowing Sensation Using Neck-Skin Movement” IEEE Access (Volume: 9), pp.105297 - 105307, 19 July 2021, IEEE, DOI: 10.1109/ACCESS.2021.3098228

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