このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米ニューヨーク大学とU.S. Army Research Laboratoryの研究チームが開発した「Aggressive Visual Perching with Quadrotors on Inclined Surfaces」は、小型ドローンが傾斜面に着地する手法だ。最大90度の垂直面に対して貼り付くように停止できる。
ドローンが着地するには基本的に水平な面を必要し、水平な面がなければ着地は困難となる。もし傾斜面にも止まることができれば着地の選択肢が増えるではないか。上空でホバリングする代わりに、ビルの側面や屋根の傾斜面に貼り付くように止まればバッテリーの節約にもなるのではないか。
研究チームはこのアイデアを実現するために、ドローンが傾斜面に止まれるアルゴリズムを考えた。今回使用するドローンは、飛行時間が10〜20分ほどの小型クアッドローターを想定し、ドローンに搭載する視野160度の下向きカメラと前面カメラ、慣性計測装置(IMU)を利用する。
カメラとIMUは、ドローンの現在の状態推定と、ドローンとターゲット面の相対的な位置関係を推定するために同時に使用する。システムはこのデータを基に、傾斜面までの経路や姿勢を計算する。
実験では、傾斜面に貼り付くために面ファスナー(マジックテープ)をドローン底面に整備し、傾斜面や角速度、加速度を調整しさまざまなな状況での着地を評価した。その結果、最大90度の傾斜面、最大600度の角速度、最大10メートル毎秒の加速度で着地できると分かった。
今回は実験のため面ファスナーを使用したが、空気吸引式の吸盤や、温度により粘着力が変化する感温性粘着シートなどを使えば、多様な傾斜面への着地も可能だろう。
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