ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >
ニュース
» 2021年12月10日 14時00分 公開

「日本メタバース協会」の違和感 “当事者不在”の団体が生まれる背景(2/2 ページ)

[西田宗千佳,ITmedia]
前のページへ 1|2       

メタバースはまだ「ぼんやり」している

 今回のような話が出てくるのは、「メタバース」という言葉にぼんやりした部分が多いからでもある。

 よく分からない人からすると「暗号資産やNFTもニュースで一緒に語られているので、なんとなく関係があるのでは」と思う人もいるかもしれない。

 実際、メタバースはまだ実現していない世界である。

 今あるのは「コミュニケーションサービス」や「会議サービス」「ゲーム」といった、メタバースの要素を備えた特定のサービスといえる。その上で、どのような形を作っていけばいいのか、どういうサービスを作ると消費者が支持してくれるのか、ということを検討している段階である。そもそも、メタバースをどんなハードウェアで体験すべきなのかも、答えが出ていない。

 FacebookがMetaに社名変更したことから急速に盛り上がっている。筆者にも「メタバースはブームで終わるのでしょうか? それとも定着するのでしょうか?」というコメント依頼が多数寄せられているのだが、毎回「まだ始まってもいないです」と答えることにしている。

 Facebookが「Meta」というあいまいで汎用性の高い言葉を社名としたことには疑問もあるが、彼ら自身、5年先10年先を見据えて動きており、今日明日の話はしていない。

 一方で、短期的に盛り上げたい人々もいて、「メタバース」という言葉のぼんやり感に拍車を掛けている部分はあるだろう。

 ただ、前述のように、現状すでにあるサービスも、技術開発が進むメタバースも、暗号資産やNFTとの間で、直接の関わりはない。

 筆者は、メタバースをあえて定義するなら「コンピュータネットワーク内に作られた仮想的な空間に人々が生活する場を作ること」と考える。生活するならコミュニケーションは必須だし、自分(アバター)を着飾ることも必須だし、ショッピングや広告などの要素も必須になる。決済も当然必要だ。

 とはいえ、そこで暗号資産を使う必然性は、いまのところない。一般的な決済手段で十分である。

 NFTも、現状ほとんど使われていない。NFTによって、特定のプラットフォーマーに依存せずに決済した上でデジタルアイテム(アバターが着る衣服や家財など)を持てるようになる「かも」しれないが、今はそうした実装は行われていない。各プラットフォーマーが展開するサービスの間で、いかにアバターやアイテムをやりとりするのか、という「インタオペラビリティ(相互運用性)」の議論が始まったところであり、NFTの決済うんぬんの前に、やるべきことは多数ある。

 ついでに言えば、「仮想空間での土地を買う」ことも意味がない。特定のサービスが勝つと決まったわけでもないし、仮想空間はこれからいくらでも増やせる。そして、リアルな土地と違い「どこが一等地か」も決まっていない。今買って投機的ビジネスをするのは個人の勝手だが、そこに産業的なエビデンスや共通見解があるか、というと、まったく存在しない。

 理想的なメタバースが成立することになれば、居住地や年齢、性別などの制約はごく小さなものになる可能性がある。そうすると、国を問わずサービスも問わない決済・資産形成の手段として、暗号資産やNFTが重要になる「かも」しれない。だが、その前に考えることは山ほどあって、いますぐそちら側が主役になるわけではない。

 事情をそれなりに理解している人からすれば、「定義がぼんやりしているとはいえ、暗号通貨関連が必須技術と主張されるのはあり得ない」と感じるし、主張する側からすれば、「自分達の関わっている部分を大きく見せたい、新領域での発言権を大きなものに見せたい」という意識が出てくるものだろう。

 そして、無理に大きく見せようとすることは信頼を失わせることにつながり、暗号資産やNFTのビジネスを拡大しようとする人々にもマイナスになる。

 彼らは、設立の段階でそこまで考えたのだろうか。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.