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偽ECサイトで金銭をだまし取る「詐欺サイト」 その実情と見分け方

» 2021年12月17日 19時16分 公開
[松浦立樹ITmedia]

 あたかも本物のようなECサイトの見た目で、ユーザーの個人情報抜き取りや金銭窃取などを狙う「詐欺サイト」。消費者庁が発表した「令和3年版 消費者白書」によると、ネット通販での商品未着や連絡不能などに関するトラブルが2020年に急増したという。

「令和3年版 消費者白書」から引用

 「詐欺サイトの被害は、一度の事件で大量の被害が発生するわけではないため表面化しにくく、消費者に注意喚起が届きにくい」。ECサイト制作などの事業を手掛けるecbeing(東京都渋谷区)の斉藤淳執行役員は詐欺サイトの被害が増えた一因をこう指摘する。

 詐欺サイトを見分けるためにはどのような部分に気を付ければいいのか。同社が12月16日にセミナーを行い、実在する詐欺サイトを例に上げて、次のようなポイントを紹介した。

通常ではありえない格安価格での販売

 第一に気を付けるべきポイントとして紹介したのは商品の価格だ。詐欺サイトの運営は、顧客に対して商品を送る必要はないため、原価を無視して大幅に値下げした商品を扱うケースが多い。ブランド品など高額な商品は値下げの見栄えがいいことから、それらメーカーのECサイトを模倣する事例が多いという。

詐欺サイトでは、クリスチャンルブタンの靴を82%オフの価格で取り扱っている

不自然な日本語表記

 日本人以外が詐欺サイトを制作した場合、記載内容が正しくない場合がある。例えば、社名が「○○株式会社第一営業所」など本来含まないはずの「第一営業所」などの単語まで入れていたり、代表取締役の名前が「太郎山田」など姓名が逆転している、営業日数に中国語で「1年」を意味する「全年」など、日本語以外の言葉を使うようなケースだ。

 特に、初めて利用するECサイトで買い物をするならば「商品の購入ページ以外にも、Webサイト内の会社情報や利用規約なども閲覧した上で、本当に信頼できるECサイトなのか判断した上で買い物してほしい」(斉藤執行役員)と指摘する。

購入して問題ないか、詐欺サイトに問い合わせたところ「大丈夫」と絵文字付きで返事が来たという

ECサイトで掲載しなければならないルールを載せていない

 おかしな日本語以外にも、ECサイトには必ず掲載が必要な「特定商取引法に基づく表記」や利用規約を掲載していない場合も、詐欺サイトでは多いという。他にも、問い合わせ先のメールアドレスが「@gmail」で企業のドメインではなかったり、振込先の名義が個人のものであったり、振込方法が銀行振込しか用意していなかったりと、通常のECサイトではありえない内容を記載している場合もある。

 詐欺サイトを立ち上げる際に、制作者は他のECサイトや企業サイトから内容をコピーしてそのまま使うこともある。商品のレビューなどがこれに該当し、レビュー内容をそのまま使い、投稿者の名前だけを変えて記載するケースもあるという。他には、利用規約などを元の企業名のままコピーしていたり、通常のECサイトには定めないルールをそのままに使用している場合もあるとしている。

Instagram内の広告や偽アカウントにも注意

 詐欺サイトについては、消費者庁などの機関が定期的に注意喚起をしていたり、Webブラウザの検索順位でも表示しないなど、アクセスできないような仕組みも数多くある。では一体どこから詐欺サイトにつながってしまうケースが多いかいうと、InstagramなどのSNSだという。

 詐欺サイトの作成者がInstagramで偽アカウントを作成し、そこに詐欺サイトのリンクを設置するケースや「○○が80%オフで販売中」などの広告をSNS内に設けるなどで流入を狙う事例が増えている。そのため斉藤執行役員は「怪しいSNSアカウントや広告にも十分注意してほしい」と話した。

 これらのポイントに補足して「サーバとの通信が『SSL』で暗号化されていれば信頼できると思われる方も一部ではいるが、SSLは詐欺サイトでも取り入れていることもある。そのため信頼の証にはならない」とも指摘した。

 詐欺サイトでの被害は、海外に運営者がいる場合も多いため返金されない場合が多い。もし被害にあった場合も「すぐに警察への被害届の提出や消費者生活センターに相談をして、対応や支援を依頼してほしい」とした。

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