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「2021年はカメラ業界激変の年だったよね」――フラグシップ3社勢ぞろいから半導体不足までヤマーとマツの、ねえこれ知ってる?(2/3 ページ)

» 2021年12月27日 17時30分 公開

実は一眼レフもやってたソニー

マツ ソニーは一眼レフやってるんですか? ミラーレスしかやってない印象。

ヤマー やってたんです実は。フラグシップにα900というモデルがあって。2008年とかなり昔のモデルなんですが、当時α事業をコニカミノルタから買収してから2年とかで。ソニーってよりはまだコニカミノルタの色が濃く出てました。ライブビューもありませんでしたし。

ソニー「α900」

 α900の光学ファインダーは一級品だったんですよ。視野が広くて明るくて、当時私はAPS-Cモデルの「α700」を使ってましたが、めちゃくちゃ憧れました。

 といってもα900は、キヤノンとニコンのフラグシップにはスペック的に届かないカメラで、当時で言えば「EOS 5D Mark II」とか「D700」がライバルでした。そのあとソニーは光学ビューファインダーを早々に捨ててEVFに切り替えていきます。

マツ しかし、撤退するような事業を買収して、それが今ではトップ2に入ってくるとかなかなかすごい手腕。

 昔はキヤノン、ニコンの二強でしたよね。

ヤマー ですね。コニカミノルタ(αの系譜で言えば旧ミノルタ)も有名メーカーではありましたが、2社が強かったので。

 その後、ソニーはお得意のデジタル技術で手探りする状態が続きます。レフレックス機構をなくしてEVFにしたTLM(トランスルーセントミラー)を世に送り出したりしましたが、2010年にAPS-Cミラーレス「NEX-3/5」、2013年にフルサイズミラーレスカメラ「α7」と「α7R」を出します。これが大きな転換点でした。

世界初のフルサイズミラーレス「α7」

マツ 今も続く流れですね。自分が今使っているのも「α7C」という、シリーズのエントリーモデル。

3社勢ぞろいのフラグシップ「α1」「EOS R3」「Z 9」

ヤマー その後「α7S」とか「α9」とか、ハイエンドモデルはいくつか出てきたんですが、2021年1月に「α1」が登場しました。α初のフラグシップモデルです。

マツ フラグシップは1を付けないといけないの?

ヤマー 唯一無二、オンリーワンのプロ機ってことで「1」を付けたみたいです。α5000シリーズ、α6000シリーズ、α7シリーズ、α9シリーズとプロ向けになるほど数字を積み上げるんですが、ここに来て「1」という。

マツ ええ、ややこしい(笑)。αって、クラス展開じゃなくて、機能展開するじゃないですか。

ヤマー ベーシック(α7シリーズ)、高画素(α7Rシリーズ)、動画(α7Sシリーズ)、連写(α9シリーズ)ですね。

 そしてα1が全部入りなんです。5000万画素(高画素)、8K撮影(動画)、約30コマ/秒撮影(連写)全部入ってる。

マツ なるほど。ぼくも「九州じゃんがら」の全部入りは好きです。

ヤマー 全部入り(80万円)。

マツ いやー、20万円超えたらどれも一緒じゃない? 「高い」で終わっちゃうんだけど。

 時系列的には、ソニーが最初だったんですか? フラグシップの発表は。

ヤマー そうですね。2021年1月。後半にキヤノンとニコンから続々出てくるわけです。

 ソニーがフルサイズのミラーレスカメラを出したのが2013年、キヤノンとニコンがフルサイズミラーレス市場に参入したのが2018年。5年のブランクがあったんですが、そこから3年で3社のフラグシップモデルがそろうあたり、キヤノンとニコンの追い上げもすごいなと。

 といっても、2社とも前からAPS-Cとか1インチでミラーレスを作っていたあたり、下地はあったんでしょうが。

マツ ミラーレスって、単に光学ファインダーを廃して、EVFやディスプレイ主体にしただけじゃないんですか?

ヤマー 光学ビューファインダー(OVF)から電子ビューファインダー(EVF)の変化もそうですが、OVFに光を送るためのミラーボックスが不要になるので、ボディーを小型化できます。

一眼レフとミラーレスの構造上の違い(出典:キヤノン公式Webサイト内スペシャルサイト

 一方で、センサーでとらえた光をEVFに送るまでのタイムラグがどうしてもあったので、スポーツ撮影などプロの現場ではOVFを好む風習はありました。あとは「EVFに映像を映す=常にセンサーのデータを読み込む」ので、バッテリーの持ちもネガティブポイントではありました。

 ただ、そこも改善されてきたのと、ミラーレスならではのメリットがデメリットを上回ったのも大きいでしょうね。

マツ 技術開発が進んでようやくソニーに対抗できるレベルにきたと。

ヤマー そうですね、どちらかといえば「既存のプロ向け一眼レフに対抗できる」が正しいでしょうが。

 そして、2社のフラグシップは一部αを超えるスペックを獲得してます。R3には視線を向けた方向にAFを合わせる「視線入力AF」や1/6万4000秒まで切れる電子シャッターがありますし、Z 9はかなり思い切った「シャッターレス」仕様かつ8K動画の125分記録とぶっ飛んでます。しかも、8K記録はα1でも未対応の8K60pをサポート予定です。

「EOS R3」に搭載された視線入力AF
「Z 9」は最大125分の8K記録が可能に

 α1はR3やZ 9と比べて小型ボディーなのが一番の特色ですかね。R3やZ 9は、耐久性やバッテリーの持ちからあのサイズになっていると思いますが、α1は「小型×高性能」を貫いていてポリシーを感じます。ただ、排熱に難があるようで、8K撮影では熱停止するって話もあるので、Z 9の手堅さがより一層際立った気もします。

マツ おお、なんか三国志を読んでいるような。

ヤマー ちなみに、キヤノンの「EOS R」はナンバリングとしてまだ「1」を残してるんですよね。ちょっと気になるところです。

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