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新時代の名刺交換だった「Poken」 プロフィール交換の課題と未来を考えるデジタル・イエスタデイワンスモア計画(2/2 ページ)

» 2021年12月28日 13時07分 公開
[甲斐祐樹ITmedia]
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プロフィール交換で面白いアプローチを見せたWindows Phone

 しかし、複数のプロフィールを1つにまとめたいというニーズは少なからずあったようで、その後もいくつかのサービスが登場している。その中でも興味深いアプローチだったのが、Microsoftの「People Hub」だ。People HubはWindows Phoneの連絡帳と連動する仕組みで、TwitterやFacebookといったSNSと連携できる。

 連携したサービスはPeople Hubのアプリからまとめて管理でき、1人のユーザーが利用しているSNSの投稿をユーザーにひも付けてまとめて閲覧できる。また、メッセージを送りたいときは、サービスを選んでから相手を選ぶのではなく、相手を選んでから使うサービスを選ぶという、手段ではなく目的ありきの仕組みになっている。

 非常に興味深い仕組みだったのだが、Windows Phone自体がさほど普及しなかったことで、Windows Phoneの機能であったPeople Hubもほとんど使われることがなかった。日本の携帯電話キャリアでは、11年にauが発売した「IS12T」のみ。Windows Phone(最終的に名称はWindows 10 Mobileとなった)も2019年12月にサポートを終了している。

photo Windows PhoneのPeople Hub

オンラインのプロフィール交換に注目が集まる

 Pokenのようにプロフィールを交換するガジェットやサービスがいくつも登場する中で、多くが定着せずに終わっていった。しかし名刺交換の文化をわずかながら変えつつあるのがコロナ禍の影響だ。

 紙の名刺は当然ながら物理的に合わなければ交換できないが、コロナ禍で在宅ワークやリモートワークを余儀なくされた結果、相手と名刺を交換できなくなった。ビデオ会議に参加した人の名前や所属が分からないままミーティングが終わってしまう、ということも少なくない。

 そこで最近では、ビデオ会議の背景にLinkedInやEightのようなプロフィールサービスをQRコードやURLで表示する、という手法が取られ始めた。URLを控えたり、QRコードをスマートフォンで映せば物理交換しなくてもプロフィールを取得でき、SNSなど他のサービスも得られる。

 また、Aroundというビデオ会議サービスは、ビデオ会議が終了すると参加者全員に履歴と全員のメールアドレスが送られる仕組みになっている。プロフィールサービスと連携できれば、QRコードやメールアドレスをわざわざ控えることも不要となるだろう。

紙の名刺とPokenのいいとこどり

 紙の名刺は誰もが扱いやすく、交換後にコミュニケーションが生まれるメリットがある一方で、メールアドレスや電話番号を手入力しなければいけない。Pokenはプロフィールをデジタルで交換できるためデータの汎用性は高いが専用ガジェットが必要で、その場でプロフィールを確認できないなど、どちらも一長一短で課題があった。

 Pokenが話題になった09年から10年以上が経過したが、Twitterは引き続き人気を誇っているし、FacebookやYouTubeも健在だ。そしてInstagramやTikTokなどのブレークでSNSがさらに多彩になった今、プロフィールを交換できるサービスのニーズは当時よりも高まっているはずだ。

 プロフィール交換手段としての名刺は、課題を持ちながらもいまだに高い普及率を誇る。しかし、前述の通りコロナ禍においては「オンラインでプロフィールを交換する」習慣が、ビジネスシーンの一部ではあるものの、着実に根付き始めている。

 コロナ禍の影響がいつまであるは分からないが、リモートワークの利便性は既に認識されており、今後も続くだろう。プロフィールをオンライン交換する行為が根付けば、オフラインの場においても名刺を使わないプロフィール交換が活躍するかもしれない。

 Pokenの2つの課題、「専用ガジェットが必要なこと」「その場でプロフィールを確認できない」を解決したサービスが登場すれば、注目される可能性もあるだろう。

 最後の課題は普及率だ。プロフィールをまとめられるサービスはいくつも登場してはいるが、プロフィール交換が相手も同じサービスを使っていなければ成立しない。一方で、ユーザーとひも付きすぎているサービスは、プロフィール交換とはなじみにくい。FacebookやLINEのアカウントを名刺のように誰でも渡せるか、というとちゅうちょするユーザーは少なくないだろう。

 ユーザーとプロフィールの中立性を保ちながら普及率を高めるという、ともすれば相反するような特性を持たなければいけないのがプロフィール交換サービスの難しいところでもあるが、名刺管理の煩雑さに疲れているユーザーは少なくないはず。筆者も自分の業務で最後までデジタル化できずに悩んでいる部分でもあり、名刺交換に代わる新たなプロフィール交換サービスの登場に期待したい。

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