ITmedia NEWS > 科学・テクノロジー >
ニュース
» 2022年01月12日 08時00分 公開

太さ0.6mmの糸型バッテリー、米MITや米軍などが開発 電源を含んだ服などを作成可能Innovative Tech

米マサチューセッツ工科大学(MIT)や中国の華中科技大学、韓国の慶熙大学校、米U.S. Army Research Laboratoryの研究チームは、糸のように細い熱延リチウムイオン繊維電池を開発した。

[山下裕毅,ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 米マサチューセッツ工科大学(MIT)や中国の華中科技大学、韓国の慶熙大学校、米U.S. Army Research Laboratoryの研究チームが開発した「Thermally drawn rechargeable battery fiber enables pervasive power」は、糸のように細い熱延リチウムイオン繊維電池だ。布地に織り込めるだけでなく、3Dプリンタのフィラメントとして造形品に組み込める。

 バッテリー部品は、依然としてデバイスの中でも硬くかさばる存在だ。イノベーションを加速させるためにも、エネルギー貯蔵能力を犠牲にせず、機械的に柔軟でコンパクト、かつ大量生産可能な従来にないバッテリーが必要とされている。

 今回研究チームは、軽くて柔軟で日常のどこにでもある基本的な構成要素の繊維に着目し、糸のようなバッテリーに挑戦した。これまでにも繊維状の電池を作る試みはあったが、それらは繊維の外側に主要材料を配置した構造であったのに対し、このシステムでは、リチウムなどの材料を繊維の内側に組み込み、糸そのものをバッテリー化した。

 この電池は、負極と正極、電解質(イオン)の各領域を分離するために、4〜6種類の材料で構成した3種類のゲルから作成する。全ての成分を入れられる幅2cmほどのシリンダーを作り、それを融点直下の温度まで加熱し、狭い開口部から材料を出すことで、元の部品の配置を全て維持したまま、全ての部品を元の直径の数分の一に圧縮する。

 これらの材料は、室温ではゴム状の固体であるが、延伸プロセスの高温では流動性を持ち、冷却すると電気的機能を維持することが可能だ。

熱延で繊維電池を作成する概要図

 圧縮して作成した繊維電池は、厚さがわずか0.6mmで、これまでの類似電池に比べて一番薄く、長さ140mとこれまでの最長も更新した。123mAh(8.8μAh/cm)の放電容量と217mWh(15.5μWh/cm)の放電エネルギーを示し、 スマートフォンとスマートウォッチの充電に対応可能な電力を供給できるという。

 1本に対して複数のデバイスを組み込めるため、部分的に切断しても電力を供給し続けられる特徴も持つ。耐久性も優れており、機械で織っても潰れない。外側はコーティングで保護されており、安全性を保ちつつ、洗濯できる防水性を兼ね備えている。

 この繊維電池は、機械織りを使用し布地に組み込めるため、電源を含んだ服などを作成できる。電源の他にトランジスタやダイオード、マイクロフォンなどの電子部品も1本の繊維内へ組み込めるため、追加機能も付加できる。応用例として、LiFiに対応した織物を作成した。

繊維電池が埋め込まれた織物
1本の繊維に電源とLEDを組み込んだ一例
LiFiに対応した織物

 布地だけでなく、3Dプリンタのフィラメントとしても使用できるため、繊維電池を組み込んだ3Dオブジェクトをワンステップで造形できる。応用例として、繊維電池とLED、フォトダイオードを含んだドローンのプロペラガードを造形した。ドローン間通信のための光検出システムに電力を供給できる。

3Dプリントに応用した繊維電池

 耐久実験では、曲面上のボディーに何十も巻き付けて取り付けた長さ20mの繊維電池によって、水中ドローンに電力を供給するテストを行った。水中での耐久性と電力供給の両方で力を発揮し、その有効性を示した。

繊維電池を巻き付けた水中ドローン

Source and Image Credits: Tural Khudiyev, Benjamin Grena, Gabriel Loke, Chong Hou, Hyeonji Jang, Jinhyuk Lee, Grace H. Noel, Juliette Alain, John Joannopoulos, Kang Xu, Ju Li, Yoel Fink, and Jung Tae Lee,“Thermally drawn rechargeable battery fiber enables pervasive power,Materials Today” 2021. https://doi.org/10.1016/j.mattod.2021.11.020.

【修正履歴:2022年1月13日 午後8時20分 放電容量と放電エネルギーに関して、一部の数値が誤っていたため、内容を修正しました。】

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.