このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米ミネソタ大学と韓国のKorea Institute of Industrial Technology(KITECH)、韓国の釜山大学校による研究チームが開発した「3D-printed flexible organic light-emitting diode displays」は、カスタマイズしたテーブルトップ3Dプリンタを使用し、有機ELディスプレイ(OLED)を完全に作成するシステムだ。ディスプレイ全体はシリコンで覆われているため、柔軟性が高く曲げても発光し続ける。
今回は一辺が約4cmで、8×8の64ピクセルの有機ELディスプレイを試作する。有機ELディスプレイの機能部品は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フレキシブルフィルム上に3Dプリントした6つの層になり、下から上に向かって、以下のような構成となる。
これら異なる素材の6層を造形するため、2つの異なるインク供給方法(押出し印刷とスプレー印刷)を共通の3Dプリンタ上に統合する改良を行った。MDMO-PPV薄膜の成膜だけは、活性材料のインクを霧状にするスプレー印刷法を使った。押出し印刷の活性層と比較して、スプレー印刷は層の均一性が向上し厚さを制御できるからだ。
有機ELディスプレイの性能は、活性層の均一性と厚さが影響するため、デバイスの信頼性と性能の向上に不可欠なアプローチといえる。残りの5つの層は、空気圧で作動する押出し印刷プロセスによって成膜する。
今回は柔軟性が高い曲がる有機ELディスプレイを作成するため、シリコンの一種であるPDMS(ポリジメチルシロキサン)で基材と6層を封止し仕上げた。
陽極と陰極をそれぞれ同じ列と行に沿って電気的に相互接続した8×8の有機ELディスプレイは、2つの電極セットにデータとスキャンの信号が入力される受動的な方法で処理する。その結果、3Dプリントした有機ELディスプレイの全ての画素が正常に動作し、文字や画像などの情報をスクロール表示することが確認できた。
曲げに対しての耐久実験では、2000回の曲げサイクルにわたって比較的安定した発光結果を示した。
Source and Image Credits: Journal Article, Ruitao Su, Sung Hyun Park, Xia Ouyang, Song Ih Ahn, and Michael C. McAlpine “3D-printed flexible organic light-emitting diode displays” SCIENCE ADVANCES, 7 Jan 2022, Vol 8, Issue 1. DOI: 10.1126/sciadv.abl8798
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