まず、今と比べるとPCの処理能力が低く、インターネット速度も遅かった時代。Second Lifeをインストールしてスムーズに表示できるPCは限られており、参加できるのはある程度のスペックのあるPCユーザに限られていた。
また、プレイの目的が用意されていない上に、操作方法も複雑だったため、ログインしても何をしていいか分からず、すぐにやめてしまうユーザーが続出した。
ユーザー数や規模だけで言えば、Second Life“ブーム”には、まったく実体がなかった。ただ、メディアと企業が盛り上がり、こぞって報道することで、まるで流行っているかのように錯覚させられていた。まさに空騒ぎだった。
そうした実態の下、Second Life内での広告効果・経済効果を期待した企業は、期待通りの結果を得られず次々に撤退していった。それに伴い、報道も沈静化。ブームの立ち上がりからわずか1年ほどで、急速に“オワコン”になっていった。
ユーザーが作り、コミュニケーションしていた小さな世界に、突然メディアと大企業がやっていて、大きすぎる期待を寄せる。だがあるとき「期待通りではなかった」と気づき、こぞって去って行った。そして、悪いイメージだけが残ってしまった。
「勝手に過剰に熱が上がり、勝手に冷めていった」――ブームが終息した2009年当時、米Linden Labの日本担当責任者だったジェイソン・リンクさんは、筆者のインタビューに対してこう答えていた。
だが、もともとSecond Lifeにいたユーザーにとって、報道の過熱や、外部からの勝手な“オワコン認定”は無関係。そもそものサービスに面白さを感じていた人は残り、淡々と活動を続けた。
Second Lifeには今も一定のユーザーがおり、日々、新しい世界が生み出されている。日本人主催のコミュニティもあり、イベントなどが行われている。
今回のメタバースブームを背景に、創業者が復帰したSecond Lifeが再びブームになることは、あり得るだろうか?
それを占おうと、筆者は今回、10年以上ぶりにSecond Lifeにログインしてみた……が、2007年当時と印象は大きく変わっていなかった。「突然、謎の空間に放り出され、何をしていいか分からない……」。
そもそも、PCのクライアントソフトをインストールしなくてはならない時点でハードルが高いし、それなりのスペックのPCでも、空間の描写に数十秒程度の時間がかかる。正直、待てない。
ただ、「ユーザーによって作り込まれた美しい空間が無限に広がっている」という印象も変わらなかった。街はより作り込まれ、ユーザーが楽しんでいる様子は伝わってくる。Second Lifeは今も、その姿を保ちながら脈々と生きている。
2022年現在は、VRChatを筆頭に、既に多数のユーザーを集め盛り上がっている3D仮想空間サービスが多数ある。コミュニティーやコンテンツの売買サービスも、当時とは比較にならないほど多様になっており、スマートフォンやタブレットなどの端末も普及した。
メタバースとしてのSecond Lifeには、可能性がある。だが、激変した競争環境の中で、Second Lifeが選ばれるサービスになり、さらに成長するためには、かなり大きな変化が必要なのではないか――これが現時点での筆者の印象だ。
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