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Twitterのスクショ投稿が違法?  判決で示された学びと悟り小寺信良のIT大作戦(1/4 ページ)

» 2022年01月25日 15時03分 公開
[小寺信良ITmedia]

 Twitter上での論争をめぐり、個人がNTTドコモを相手取り、情報開示請求を訴えた東京地裁での裁判の口頭弁論が2021年10月19日に終結し、12月10日に判決が出た。判決文によれば、原告勝訴で発信者の情報公開を命ずる判決となった。

photo 判決文

 ここだけ聞くと、これまでも名誉毀損などでよくあった裁判のように思えるが、争点となったのが著作権であったことから、一般のTwitterユーザーにも大きな影響が出そうな判断が含まれることとなった。

 被告側が控訴する構えを見せているため、これで確定したわけではないが、Twitter上の言い争いからなぜ著作権法が引っ張り出されるのか、われわれは今後どう対応していくべきなのか、そういうことをまとめてみたい。

争点となった著作物性

 判決文には原告のTwitterでの発言が証拠として掲示されており、その内容から察すると、複数人との間で言い争いがあったようである。ただ双方の発言は、裁判上で争いとなった部分に限られるので、細かい経緯は分からない。

 だが、この裁判の前に原告はTwitterに対して、相手方のIPアドレスとタイムスタンプの開示を求める仮処分命令を申し立てており、東京地裁では2021年5月にこの申し立てを容認する仮処分決定を行っている。そして開示されたIPアドレスとタイムスタンプを元に本人を特定するため、その情報を持っているキャリアに発信者情報開示請求をした、という流れである。よってこの裁判の被告が、キャリアになっているわけだ。

 この裁判の争点は、大きく3つに分けられる。

1:プロバイダ任制限法4条1項にいう「権利の侵害に係る発信情報」の該当性

2:権利侵害の明白性

 ア:原告各投稿の著作物性

 イ:引用の成否

3:正当な理由の有無

 ここでキーになるのは、(2)の「権利侵害の明白性」だ。ここが名誉毀損などではなく、著作権の問題となっている。

 では具体的に何が問われたかというと、相手方が原告のツイートのスクショ(スクリーンショット)を添付し、発言の趣旨を問いただす旨の投稿をした。そのスクショが、著作権法上の権利を侵害した、というわけである。

 そこで、ア:原告の発言に著作権で保護されるような著作物性があったか、イ:相手方の発言は引用の要件を満たしているか、ということが判断されることとなった。

 まずアの著作物性についてだが、著作権法上の著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義されている。判決ではスクショに撮られた原告の4つの発言について、その著作権性を吟味している。分かりやすいようにそれぞれについて、発言と判断を対比させて見ていく。

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