今回特徴的なのは、原告の相手方となった数人が、原告の発言を「リツイート」ではなく、スクショで添付しているところである。相手方の発言をスクショで見せるという手法は、みんながみんなそうしているとは言わないが、見かけることはある。
理由はさまざまだろうが、すでに対象となる発言が発信者によって削除されているとか、複数の発言を時系列で並べたいと言った場合は、Twitterが提供するリツイート機能では事足りず、また1発言140字以内という制限もあることから、スクショで対応するより仕方がないというのが実情かと思う。
ただ、そもそもTwitterが発言を140字以内に限定しているのは、長文や時系列などの込み入った話には向いてない作りにすることでいさかいを減らすという目的があったわけだが、画像による長文がありということになれば、そうしたポリシーも機能しなくなる。今は、技術的にできるなら何でもアリ、になってしまっているわけである。
Twitterのサービス利用規約には、次のように書かれている。
ユーザーは、本サービスまたは本サービス上のコンテンツの複製、修正、これに基づいた二次的著作物の作成、配信、販売、移転、公の展示、公の実演、送信、または他の形での使用を望む場合には、Twitterサービス、本規約または https://developer.twitter.com/ja/developer-terms (*開発者利用規約)に定める条件により認められる場合を除いて、当社が提供するインターフェースおよび手順を使用しなければなりません。
つまりTwitter上の発言や画像などを扱うには、リツイートを含む公式機能を使わなければならないわけで、発言のスクショを撮ってこれを貼るという行為は、利用規約で認められた方法ではないと考えられる。
ただ、著作権法には著作権者の許諾なく利用できる方法もいくつか規定されており、その1つが「引用」である。著作権法第三十二条には以下のように記されている。
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
つまり引用であるためには、「公正な慣行に合致する」ことと、「引用の目的上正当な範囲内で行なわれる」ものという2つを満たす必要がある。この「引用の目的上正当な範囲内」とは何かというと、これには5つの条件があるとされている。
じゃあ原告発言スクショ付きの投稿、これらの条件に合致するか、ということになる。そこで東京地裁の今回の判決を読み解いてみると、まず「公正な慣行に合致する」かどうかに関して、スクショによる複製での投稿はTwitterが求めているインタフェースや手順ではないため規約に違反する、従ってこれは公正な慣行に合致するものと認めることはできない、としている。
ただ、この辺りは危うい判断のように思える。確かに利用規約にはないが、すでに広く認知され使われている方法であり、規約違反だからという1点のみにて公正な慣行に合致しないと断ずるのは早計ではないか、という法律関係者の意見がネットニュースで見られる。
また「引用の目的上正当な範囲内で行なわれるもの」かどうかに関しては、判決ではスクショ画面のほうが量的にも質的にも主たる部分であり、投稿者の意見部分が主ではないため、引用の目的上正当な範囲内であると認めることもできないとしている。
実際にどのような発言だったかというと、これも判決文の中にある。スクショ内容は、記事中で前記した原告投稿1〜4をご参照いただきたい。
この方です( ・ω・`)。。
(以下原告投稿1のスクショ)
私に対してのリプ
何にもしてないのにぃ(Ó﹏Ò。)
(以下原告投稿1のスクショ)
絡んだ時間順に並べてみました。
暴言はいてます?
(以下原告投稿1、2、3、4のスクショ)
はい!あなたは私に暴言をはきましたが、私はあなたに暴言をやめてとかしか言っていません。
具体的に教えていただいてもいいですか?
検索しても出てこないです!
絡んだ順にスクショ置きますね!
どの事でしょうか?
(以下原告投稿3のスクショ)
判決文で、引用の5条件のうち2〜5に関して言及していないところからすると、これらの条件は満たしているというふうに取れる。残る1の引用による主従関係は、その内容もさることながら、割と量や面積で見られることも多い。確かに文章量でみると、スクショに書かれた文字のほうが多いことになる。ただ「質」という点では、本当に添付画像が主といえるだろうか。ここも割と違和感がある部分だ。
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