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Twitterのスクショ投稿が違法?  判決で示された学びと悟り小寺信良のIT大作戦(4/4 ページ)

» 2022年01月25日 15時03分 公開
[小寺信良ITmedia]
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ここから学べることは何か

 判決文からはこのもめごとの経緯までは分からないが、示されたやりとりの内容と判決結果を見ると、非常にモヤッとさせられる判決ではないだろうか。本来こうした案件の情報開示請求ならば名誉毀損でやりそうなものだが、著作権で争っているところがかなり変化球である。

 著作権は非常に強い権利であり、加えて内容や出来の良し悪しといった対外的評価を伴わないため、人が自分で考えて形にしたもののほとんどが著作物と認められがちだ。したがって多くの争いで著作権を持ち出す例も多く、法廷で勝てる便利アイテムみたいな使われ方になっている点は、法体系全体のバランスを壊しかねないところである。

 被告側が抗告しているのであればまだ確定していないが、この判決がネット利用のあり方に一石を投じることは間違いないだろう。というのも、スクショとはすでに削除された発言も引っ張り出せるという強みがある。

 一方で、発言を削除という形で意見を撤回したのであれば、それはそれで認められるべきであろう。「忘れられる権利」の創出も最近は議論が止まっているように見えるところだが、削除した発言のスクショがいつまでも貼り直されて出回るというのは、まさに「忘れられる権利」の考え方とは相反するところである。

 昨今は一定時間で投稿が消えるというサービスも人気となっているが、これは消えたらもう見られないからいいのであって、スクショでいつまでも見られるのであれば、サービスを利用する意味や価値が激減する。今回の裁判で言えば、中身がモヤッとするのは筆者も同じ気持ちだが、「相手発言はリツイートで参照」「削除した発言はもう読めない」はサービスが定めたルールであり、ルール外で戦ったら誰も守れないよ、という話でもあるのだ。

 この裁判からは、スクショを撮るのは証拠保全として、サービスのルール外、すなわち裁判のような場所で有効に活用する伝家の宝刀のようなものではあるが、サービス内でめったやたらに振り回すと逆に不利になる、ということは学べるのではないだろうか。

 まあそれよりも、頻発するこうしたいさかいに対して抑止効果を失ったサービス上で、目を血走らせてう○この投げ合いを続けて何になるのか、ということが、今回一番大きな学びと言えるかもしれない。

※ちなみに裁判所の判決は、権利の目的とならない著作物として著作権法第十三条三に規定されている

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