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瞬間風速は年収1000万? 出前館の配達に異変 報酬3倍の時間帯も(2/2 ページ)

» 2022年01月28日 15時00分 公開
[井上輝一ITmedia]
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 「これは出前館で30回配達して4万稼いだという意味」とAさんは解説する。Aさんによれば、出前館は配達員にSNSへの業務情報の書き込みを禁じていることからこうした隠語的な表現で書き込む人がいるという。他にも「[缶]やったときの時給6800円」といった書き込みもあり、このペースなら確かに年収換算にして1000万円だ。

地域や時間帯別に出前館がインセンティブを設定

 これほど出前館の単価が高くなっているのは、地域や時間帯によって、出前館がインセンティブを設定しているからだ。

 Aさんが見せてくれた、出前館ドメイン(demae-can.com)のあるページには「北海道 釧路 17時 3」「東京都 白山/上野 11時 2.9」といった拠点と時間帯ごとのインセンティブが日付別に表でまとまっている。3や2.9は倍率で、1件当たりのもともとの単価が715円であれば2145円もらえることを意味する。表を一覧する限りでは、3倍が最大のようだ。

 「さらにキャンペーンで、新規で配達を始めた人は一律30%の報酬アップもある」とAさんは明かす。Aさん自身も12月から出前館の配達を始め、1件当たり約1500円の報酬を得ているという。

ヤフーとアスクルとの即配サービス本格展開の布石か

 ただし、このインセンティブがいつまでも続くわけではない。「来月は減るはず」とAさんは話す。「翌月以降の施策ははっきりとは分からない」としつつも「送料無料キャンペーンも1月で終わることから、注文数も減り、配達需要も減るだろう」とみている。

 フードデリバリーサービスの業界を見渡すと、2021年12月にはfoodpandaの日本撤退があった。理由は「競合他社の増加や配達員不足」としていた。22年1月26日には、ヤフーとアスクル、出前館が、最短15分以内に食料品や日用品を配達する即配サービス「Yahoo!マート by ASKUL」の本格展開を発表している。

 こうした状況を鑑みると、出前館のインセンティブは、配達員不足の中でも配達員をつなぎとめつつ、新規事業の人員確保のために行っていた施策という側面もありそうだ。

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