技術やアイデアによって、当たり前だと思っていたものの概念がガラリと変わることがある。
プロダクトの面白さや、それを作る側への関心は、そのパラダイムシフトのような衝撃を味わいたいから生まれるような気がする。それはイノベーションというようなアイデアの問題ではなく、もっと技術に則した方向で生まれたものほど衝撃が大きいような気がしている。
新潟県燕市の刃物製造販売メーカー、シゲル工業の大根おろし「17°(ジュウナナド)」(9900円)は、そういうプロダクトの1つだと感じたのだけど、その面白さ、すごさを伝えるのはなかなか難しい。
いや、実は「大根おろし」というジャンルは、そういう技術とアイデアの集積による名品がぞくぞく登場しているジャンルで、それこそ、シゲル工業と同じ燕三条地区には、おろし金の専門メーカーともいえるツボエが開発したクアトロ刃による「ツボエの極上おろし金 箱」(8800円)という名品があり、また、金属ではなく、竹などを材料にした「鬼おろし」と呼ばれる大根おろしも人気を博している。どちらも、従来の大根おろしのイメージを大きく変えるもので、愛用者も多い。
シゲル工業のおろし金「17°」(9900円)は、刃が一方向にだけ立っている、片方向のみで大根をおろす方式を取っている。
これは、ツボイのクアトロ刃とは違う個性で、どちらが上ということはないが、シゲル工業が目指した「究極のフワフワ感」と「ツユが出にくい」「洗いやすい」という点では、この片側にだけ刃を立てる構造がベストだった。大根をおろし金の上で往復させるタイプだと、往復の過程で大根自体をつぶしてしまい、ツユが出やすくなってしまうのだという。さらに、製品名にもなっている「17度」の傾斜は、試行錯誤の上にたどり着いた、力が集中しやすくて最も楽におろせる角度。おろしている最中にもおろし金を見やすい角度でもある。
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