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アクセス数が読めないサービス、提供基盤はどう選ぶ? ワクチン予約システムを手掛けた地方SIerの判断クラウド事例ウォッチ

» 2022年02月02日 14時23分 公開
[ITmedia]

連載:クラウド事例ウォッチ

クラウド事業者が公開しているクラウドインフラの活用事例から、事業や業務効率化の参考になるものをピックアップ。IaaS・PaaSが実現するビジネスの可能性をコンパクトにお届けする。

 地方自治体向けにITサービスを提供する四国情報管理センター(高知県高知市)。同社が2021年3月にリリースした、SaaS型の新型コロナウイルスワクチン予約システムは、提供基盤にAWSを採用している。同社はこれまで、自社サーバにシステムを構築し、ユーザー企業に提供していた。しかし今回の場合はアクセス数が想定しにくかったことから、サーバへの負荷を警戒し、クラウドの活用を決めたという。

 四国情報管理センターは自治体向けに健康診断予約システムや住民情報の管理システムを開発し、提供している企業だ。同社がワクチン予約システムの開発を決めたのは、政府が国内でのワクチン接種の見通しを示した20年12月。既に提供していた健康診断予約システムの設計を流用すれば、短い期間でサービスを開発できると考えたという。

 一方で、開発に向けては課題もあった。サービスの提供インフラだ。これまで四国情報管理センターが提供してきた健康診断予約システムなどは、短時間にアクセスが集中しにくく、オンプレミスでも問題なく運用できた。

 しかしワクチンの予約システムは、自治体内でワクチンの接種対象となった人が、短期間のうちに一斉にシステムへアクセスする可能性があった。当時は接種が段階的に行われるかどうかといった情報もなく、リアルタイムで感染が広がっていたこともあり、アクセス数の予測も立てにくかったという。

 とはいえ、アクセス集中のピークに備えてオーバースペックなサーバを用意するわけにもいかない。国民がワクチンを打ち終えればシステムは必要なくなり、せっかく用意したサーバが無駄になってしまう可能性があったからだ。

 そこで同社は、アクセス数の増減に合わせてサーバの性能や数を調整しやすいクラウド基盤の採用を決定。担当者がユーザーコミュニティーに参加していたこともあって、AWSを採用することにした。

 しかし、基盤の構築には別の課題もあった。作業時間が限られていたことだ。四国情報管理センターが作業に着手したのは21年1月。その時点では具体的な接種の開始時期は明らかになっていなかったものの、「接種開始は4月」などのうわさもあり、なるべく早く完成させたいのが実情だった。

photo システム構成のイメージ

 そこで四国情報管理センターは、クラスメソッドに1カ月だけ支援を依頼。セキュリティ対策やサーバの性能を調整する仕組みについてアドバイスを受けることで、3月末までにサービスを完成させ、いくつかの自治体に提供できた

 アクセス集中への対策としては、負荷分散を行うマネージドサービス「Elastic Load Balancing」を採用。サーバ数などの調整時に参考にするパラメータについてクラスメソッドからアドバイスを受けたこともあり、可用性を高められたという。

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