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コロナ禍にTwitter上で拡散したデマツイート、東大と和歌山大が調査 社会や個人への影響度を分析Innovative Tech(3/3 ページ)

» 2022年02月08日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]
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報道や公表の後で流言がツイートされる傾向に

 日ごとのコロナ禍における流言ツイートを確認すると、実社会上でコロナに関する出来事が生じたタイミングで、流言数やツイート数においてコロナ禍関連の流言の割合が必ずしも増加しているわけではないと分かった。

 その一方で、流言数やツイート数においてコロナ禍関連の流言の割合が50%を超えた日について、どのような内容の流言が話題にのぼっていたのかを確認したところ、一部の流言については、その日以前に流言の発生原因になったと考えられる実社会上の出来事があると分かった。

 例えば、3月25日と26日には、コロナ禍関連の流言として「新型コロナウイルスに和牛が効く」といった内容に関するツイートが急増した。この流言が話題にのぼったのは、25日に「新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済対策としての、国産牛肉の購入に使えるお肉券を配布する構想がある」というニュースが報じられたことが原因ではないかと考えられる。

 4月28日と29日に「新型コロナウイルス罹患者が冠岳温泉を利用」といった流言に関するツイートの急増が見られた原因として、冠岳温泉の公式Webページにおいて、「4/20の鹿児島市内の専門学校生の罹患発表」が原因ではないかと考えられる。これらは、メディアなどでの報道内容や組織による公表内容などが原因となり生じた流言の一例であると考えられる。

 3月9〜12日には「新型コロナウイルスに納豆が効く」といった流言に関するツイートの急増が見られたが、この流言のツイート数が増加した原因には「3月8日以前の茨城県に新型コロナウイルスの感染者がいなかった」という状況から、茨城県の特産品である納豆に予防効果があるという内容の流言が生じた可能性がある。この流言は、ある状況からの推測により生じた流言の一例であると考えられる。

流言および発生原因となった実社会上の出来事の例

 報道や公表が発生原因に伴う流言については、報道や公表を行う際、そこに含まれるキーワードなどを監視対象キーワードとし、Twitter上で関連キーワードの増加などを注視しておくことで、流言拡散の早期発見や対策検討につなげられる可能性がある。

流言ツイートの特徴

 流言ツイートに対し、一時的に発生し収束していく内容や、長期間継続的に話題にのぼる内容などを見ていく。

 特定の期間に集中的に発生した後に収束していき、話題にのぼらなくなる内容の例には、都市封鎖や感染者の脱走、死者の発生に関する流言が挙げられる。特定期間に発生し収束するとはいえ、ツイート総数の多いものは、人々が目にする機会が増える可能性があるといえる。

 その一方で、期間中に複数回話題にのぼる内容の例には、感染者の発生や感染経路、医療崩壊などはコロナ禍における状況の変化に伴い何度も生じた。一定期間継続的に話題にのぼったり、一度収束した後に再度話題にのぼったりするなど、なかなか収束せず、人々が目にする機会が増えてしまう可能性が高いといえる。今後はこのような流言が生じる可能性を考慮して対策を検討する必要がある。

 最後に、Twitter上の流言ツイートに対する拡散(訂正ツイート)について、人から人への口伝えによる流布の定式が適応できるかを考察する。これまでの口伝えによる流言の拡散とは違い、Twitterは人から不特定多数に向けて拡散される。そのため、従来の「流言の流布量は重要さと曖昧さとの積に比例する」という定式があてはまるかを検証した。

 その結果、個人に対する経済状況への影響度合いが高そうな内容は、訂正ツイート数が少ないことを示しており、従来の口伝えにおける流言の流布量に関する定式とは逆の傾向を示す結果となった。すなわち、Twitter上の流言拡散において、従来の流言流布に関する知見が適用できない可能性が示唆された。

出典および画像クレジット: 平林(宮部) 真衣, 吉野 孝, 河添 悦昌. “新型コロナウイルス感染症流行時におけるTwitter上の流言訂正情報に関する分析” 情報処理学会論文誌. Vol.63, No.1, p.29-44.



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