オンキヨーホームエンターテインメントの子会社、オンキヨーマーケティングとオンキヨーサウンドが事業を停止し、破産申請の準備を始めたというニュースは、ホームAV事業をシャープとVOXXグループの合弁会社に譲渡したときと同様、多くのオーディオファンに衝撃を与えた。
オンキヨーは、松下電器産業(現在のパナソニック)のエンジニアだった創業者が終戦直後の1946年に創業した老舗オーディオ専業メーカー。古いオーディオファンならオンキヨーが東芝資本の元にあった頃(1957年から1993年まで)、東芝系列店でオンキヨー製品が販売されていたことを覚えている人もいるかもしれない。
東芝生え抜きのオーディオブランドとして「Aurex」(オーレックス)もあったが、オーレックスがオーディオブームの終焉とともに1990年に撤退したのに対し、オンキヨーはブームが去った後にも、様々なアイデアで生き抜いてきた。
小型ながら本格的なオーディオコンポーネントとしてこだわった企画、設計だった「INTEC」シリーズは、オンキヨーが得意としていた小型のブックシェルフ型スピーカーなどとともに1990年代から2000年代にかけ、当時「ハイコンポ」と呼ばれた商品ジャンルで独自の地位を築いた。
また2000年代にホームシアター市場が拡大すると、オンキヨーブランドとは別に兄弟機ともいえる「Integra」(インテグラ)ブランドを立ち上げた。Integraは北米市場でカスタムインストール用(宅内の工事を伴うホームシアター作り)に開発した製品群に与えられたブランドだったが、それを逆輸入する形でオンキヨー以上に高いブランド力を持つ製品ラインとして定着した。
メインストリームのオンキヨー製品だけではなく、市場特性に合わせた緻密な商品企画、ブランド展開がオーディオメーカー不遇の時代に生き残ってきた理由だったように思う。
その後は米Intelとの関係を強め、PCメーカーのソーテックを子会社化。オーディオPCの開発を行ったり、ハイレゾ音源のダウンロードサービスの草分けである「e-onkyo music store」を始めたりと、その後のオーディオトレンドを捉えた戦略も実践してきた。
しかし2014年にギブソン傘下となり、さらにパイオニアのAV部門を統合する頃になると経営環境は悪化。2018年にはギブソン自身が米国連邦破産法第11章(チャプター11)の適用を申請し、再建を目指す際にオンキヨーから資金を引き上げた。
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