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オンキヨーはどこへ行く AKAIやSANSUIの“いつか来た道”(2/2 ページ)

» 2022年02月18日 17時59分 公開
[本田雅一ITmedia]
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 ギブソンが資本参加したばかりの頃には、まだ内部から元気な声も聞こえていたが、ギブソンとの関係が解消される少し前からは、すっかり以前ほどの活発さを失っていった。

ギブソンが資本参加したばかりの2014年には東京・八重洲にギブソン、ティアック、オンキヨーによる世界初のショウルーム「Gibson Brands Showroom TOKYO」を開設
オンキヨーやティアックの機器とギブソンのギターが同居していた(写真はオープン時のもの)

 結果、2021年5月8日にシャープとVOXXグループに、エンドユーザー向けのホームオーディオ&ビジュアル製品を開発する部門は売却され、資本関係のない「オンキヨーテクノロジー」へと業務が移管された。

 e-onkyoに関しても、フランスのXandrie S.Aに事業譲渡されており、オンキヨーホームエンターテインメントには一般消費者向けの製品やサービスを直接提供する会社ではなくなっていた。つまりオンキヨーホームエンターテインメントは、オーディオファンが考える「オンキヨー製品を開発するメーカー」ではすでになくなっている。

ブランドとしてのオンキヨーは残る、ただし

 2月8日に事業を停止した2社は、オンキヨーブランドの製品や販売代理店になっているオーディオ製品を流通させる販売会社と、他社向けにオンキヨーのオーディオ技術を供与するB2B事業の会社で、エンドユーザー向け製品を直接は開発、生産していない。オンキヨーマーケティングは、オンキヨーテクノロジーが開発した製品のマーケティング業務を担っていたものの、製品そのものの開発・生産には、その親会社であったオンキヨーホームエンターテインメントは関与しておらず、資本関係もなかった。

 では、今後どのような影響があるのか。オンキヨーが技術を供与していたレグザ(テレビ用スピーカー)や河合楽器(デジタルピアノ用スピーカー)が発売する今後の製品などに影響を与える可能性はある。では、オーディオ&ビジュアルの世界では名が通ってきたオンキヨーブランドの消費者向け製品はどうなるのだろうか?

 国内に関していえば、販売を担当していたオンキヨーマーケティングの事業停止が大きな懸念事項だ。今後オンキヨーブランドを扱うと商社が名乗りを挙げれば、国内でのブランド存続に可能性が出てくるだろう。

 しかし、オンキヨーテクノロジー株式のうち85.1%はVOXXの子会社であるPREMIUM AUDIO COMPANYが保有している。一部製品の開発や生産を依存しているシャープも14.9%を保有しているが、オンキヨーテクノロジーの目線は国内市場ではなく、北米や欧州、中国・アジア市場に向いていると考えるべきだ。

 かつて「AKAI」や「SANSUI」が日本国内から消えた一方、海外でオーディオブランドとして一定のプレゼンスを得ていたように、国外向けにオンキヨーブランドを冠したオーディオ製品がいくつか作られるのではないだろうか。ブランドとしてのオンキヨーは残る。ただし、それが“オンキヨーの魂”が込められた製品になるのか、あるいは名前だけのものになるかは現時点では分からない。

 国内向けのオーディオあるいはAV機器としてのオンキヨー製品は、2021年5月の事業譲渡で実質的には失われていた。今後は実ではなく”名”の面でもその存在がより希薄なものになっていくのかもしれない。

【訂正:2022年2月18日午後8時22分更新 ※e-onkyoの譲渡先の社名に誤りがあり修正しました。正しくは仏Xandrie S.A.です】

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