前置きが長くなってしまった。今回は「デジタルツイン」の考え方を取り入れ、ホール録音をシミュレートしたピアノのDolby Atmosコンテンツ作成に挑戦してみた。デジタルツインというのは、リアル世界の情報(データ)を利用して、コンピュータ上にリアル世界の事象を再現する手法のことを指す。
あたかもサイバー空間上にデジタルで双子(コピー)を生み出すかのような手法なのでこう呼ばれている。コンピュータ上でシミュレーションした結果をリアル世界にフィードバックすることで、業務内容の改善や付加価値を高めようという考え方だ。
ホールでピアノを収録する機会が多い筆者だが、これまで空間オーディオ制作の経験は皆無だ。したがって、マイクをどの程度の距離で、どこに配置すべきなのかといった知見はない。
とはいえ、PoC(概念実証)を行おうにも、ホールを借りてスタッフやピアニストを手配して、となるとそれなりに費用が発生し、調整や準備に時間もかかる。それならばと考えたのが、MIDIデータでピアノ音源を鳴らし、マイクセッティングを仮想的に行うことでデジタルツインが可能になり、Dolby Atmosを前提としたホール録音をシミュレーションできるのではないかという話だ。
実際の現場で、バリバリと空間オーディオコンテンツを制作している先輩諸氏からすると、ある意味、邪道でしかないのかもしれないが、リアルな録音に入る前の準備として、マイクセッティングやミックスのスキリングに挑戦した「暴挙」とお許しいただきたい。
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