制作には、MacBook Pro 2021、Logic Pro、ピアノ音源の「Pianoteq 7 PRO」を利用した。Pianoteq 7 PROは、サンプリングではなく物理モデリングでピアノの音を再現するプラグインだ。ベーゼンドルファーやスタインウェイといったさまざまなピアノの音色だけでなく、マイクの種類、ポーラパターン、配置といった収録環境もシミュレートできる。
ただ、残念なことがある。Pianoteq 7 PROのリバーブは、アルゴリズム(モデリング)型なので、「現場」のインパルスレスポンス(IR)音源を基にした畳み込み演算(コンボリューション)処理の残響を設定できないのは惜しいところだ。
Logic Proのリバーブプラグインである「Space Designer」には、筆者がよく利用する「かながわアートホール」で録音したIRによる設定が保存してある。それを適用できればアンビエントの音像もデジタルツイン化することができたのだが……。
実際にコンテンツ制作を始めると、マイクの位置やリバーブの量など、試行錯誤をくり返す結果となったが、自身のホールでの収録経験に照らしながらPianoteq 7 PRO上で仮想のマイクセッティングを決めていった。
概ね次の図のようなイメージでマイクセッティングした。周囲を囲むように5つのステレオトラックで残響音を収録すると同時に、ピアノ弦のアタックの輪郭を得るために、近接マイクをピアノの蓋の中に突っ込む形にした。ちなみに、「真上ハイトマイク」は、図ではピアノの縁に置いたが、ピアノの真上に仮想的に設置している。
図の括弧内の文字は、各仮想マイクで収録した音源をDolby Atmosのベッドトラック、オブジェクトトラックのどちらに割り当てたのかを示したものだ。ポイントとしては、残響系はすべてベッドトラックに設定し、近接マイクとピアノの真上のマイクをオブジェクトトラックに割り当て定位感を演出してみた。
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