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ホールでの録音をデジタルツインによる空間オーディオでシミュレートしてみた(作例付き)(4/6 ページ)

» 2022年02月25日 12時45分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

音を立体的に定位させるための試行錯誤

photo Pianoteq 7 PROの仮想マイクセッティング画面。6つあるマイクセッティングのうちの1つ。M/Sステレオマイクを仮想化してみた

 上の図は、Pianoteq 7 PROの仮想マイクセッティング画面の1つでMid/Sideのステレオマイクを設定したところ。

 ピアノから2メートル程度離れた位置の高さ約3メートルのところに「Mid+ Side=カーディオイド」と「Mid−Side=双指向」をそれぞれ1本づつ仮想的に設置し、Mid−Sideチャンネルの信号は位相を反転させている。このように、マイクセッティング図にしたがって、他も含め6つのステレオペアによる仮想マイクを設置し、各トラックの音源をWAV形式の48KHz/24bitで個別に書き出した。

photo リアルの現場では、Neumannのステレオマイクを使い収録している。ホール録音は、これ1つあればバッチリという秀逸なマイク

 書き出した6つのステレオ音源をLogic Proの各トラックに割り当てた。近接マイクと真上のハイトマイクは、オブジェクトトラックに、それ以外のホール残響を収録したマイクは、ベッドトラックとして設定した。オブジェクトとベッドは、それぞれVCAトラックにまとめて一括でバランス取りが可能なようにした。

photo 各トラックのフェーダーは面一で揃え、オブジェクトとベッドの各VCAフェーダーだけでバランスをとった。音源の遠近は、Surround Pannerで調整した
photo ベッドトラックにおけるサラウンドの各スピーカーへの配分は、Surround Pannerで行う仕組み。スピーカーアイコンをクリックするとオン/オフ可能

 上の図は下手側(演奏者の背中)に設定したベッドトラックのマイク音源のSurround Panner設定。前方、側面、ハイトの各スピーカーはオフに設定し、背後の2つのスピーカーだけから音を出している。他の仮想マイクについても同様に、それぞれマイクの設置位置に合致した方向のスピーカーから音を出すように設定した。

 Logic ProでDolby Atmosのプロジェクトを作成すると、マスタートラックにDolby Atmosのレンダリングプラグインが自動的に挿入される。今回、ラウドネス値を規定の-18LUFS以下に設定したかったので、コンプレッサープラグインをマスタートラックに挿入して最終レベルの調整を実施した。

photo Dolby Atmosでは、ラウドネス値を-18LUFS以下にしなければならないので、ラウドネスメーターは必須。Dolby Atmosプラグインの後に挿入する

 Dolby Atmosのミックスでマスタートラックにプラグインを挿入する場合、次のことに注意しなければならない。

 基本的に音に変化を付けるプラグインは、Dolby Atmosプラグインの前段に挿入する。ただ、プラグイン効果が適用されるのは、ベッドトラックのみで、オブジェクトトラックには適用されない。今回は、Neutron 3のコンプレッサーを挿入した。

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